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大津由紀雄先生「ことばの実験室」のご報告 |
07月26日 (日) |
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7月21日国立オリンピック青少年センターにて、ことばの探検隊、大津由紀雄先生(ラボ教育センター理事、慶應義塾大学教授)のもと小学生対象に「ことばの実験室」が開催されました。地区を越えた有志のテュ-タ-の企画で、 私も初めて子どもたち5名と共に参加することができました。大津先生は、MIT大学院でチョムスキー博士のもと、言語学を研究。ラボの教育を高く評価している学者の一人。
Who killed Cock Robin? I, said the sparrow 「コックロビンを殺したのは誰? おれ とスズメがいった」~をテュ-タ-が紙芝居で紹介。隊長から、何か気づいたことはあるかな?と子どもたちに質問。子:「わし、おれ、ぼく...いろいろ出てきた」、隊長:「どう使い分けるのかな?」子:「『ぼく』は相手と対等か下」~。いろいろな意見。日本語には、自分の言い方がたくさんあることに気づく。隊長は、それ以上は言わない。
次に、「『おんせん+まんじゅう』は、あるね。じゃぁ『まんじゅう+おんせん』は?」子:「おんせんたまごならある!」隊長:「じゃぁグループごとに、たまごおんせんの絵を描いてみようか」...子どもたちは、湯舟に卵が浮いている温泉や卵形温泉、卵が降ってくる温泉、シャワーから卵が出てくる~など、いろいろ想像豊かな絵を発表。隊長:「じゃあ、『にっしょく+まんじゅう』と『まんじゅう+にっしょく』はどうちがうかな、絵にしてみようか」...子どもたちはグループごとに活動。終了後、テュ-タ-が、大津先生著の『ことばのからくり』(岩波書店)の本を読み、子どもたちは、「ことば」への気づきをさらに高めていきました。
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このグループ作業の間、大津先生は、テュ-タ-やお母様方対象に、解説。「母語」(人間が生まれてから一定期間ふれていることによって自然に身についた言語)、「第二言語」(既に母語がある中、一定期間ふれていることによって自然に身についた言語)、「外国語」(既に母語あり、日常的なふれ合い無し、意識的に学ぶ言語)の区別をまずしっかりすること。現在の小学校英語をみていると、文科省は「コミュニケーション能力の素地を養う(お友達と話したいなぁという心を育てる)」ことの一つとして英語を「外国語」として導入している。これはおかしい。コミュニケーション能力を育てるのであれば、母語を活用すれば十分。
谷川俊太郎の「かっぱかっぱらった~」を、ほとんどの子どもたちは、面白いと感じる。音の連続の面白さが、頭をくすぐる。「おんせん+まんじゅう」も、複合名詞ABがあった場合は、Bが優先されることに気づくことができる。母語は、意識的に習ったわけでもない、自然に身についている言語、その誰しもが共通にもっている「ことば」への気づきを、誘発し活用させることで、「ことばの仕組み」(=文法、悪いイメージがある人が多いが)に気づかせることが大切。国文法の活用表も誰しもがつまらないと感じた思うが、これも古文を読み込むために理屈を知る必要があり、そのためにも国文法の学習が必要。
母語でしっかり「ことばへの気づき」が出来てから、英語へ入ることが大切。母語で「ことばの仕組み」の直感がきくようになっていると(網の目の準備ができていると)英語へスムーズに入れる。英語だけでなく、他の外国語を学ぶことにより、より「ことばへの気づき」が豊かになる。この循環が形成されると、母語の運用、語彙も増える。
英語の聴く力の無い子というのは、英語のリズムが分からない。さらに区切りが分からない。確かに小さい頃から英語にふれると聴き取りがよくなり、発音がよくなる。が、それだけで言語が出来るわけではない。ラボでは、英文と日本文が交互に編集されている。音の内容をすぐに確認できていることがいい。現在の小学校英語でも、歌や物語というが、英語のみ。母語の世界が重要。...ここで時間に。
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一方、子どもたちの方は、活動を終え、午後の部は、発表。さらに『かぶ』の話の続きを考えたり、「こわい めの( )」の括弧内を想像したり、いろいろな方言を聞いたり、先生も驚くほど、活発に意見が出されました。意見が出るだけではなく、内容が想像豊かでおどろかされました。さすがラボっこ。『かぶ』の続きでは、続きどころか、動物が本性をあらわして、最後に引っ張った動物が、前の動物を食べていくという話も。
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先生は、絶対に教えない。気づいたところまででおしまい。あくまでも「実験室」。「理科の実験と違って、素材は皆、頭の中にある、しかも公平にある」と。
先生の著書『探検!ことばの世界』(以前、テュ-タ-へ配布されたもの)をあらためて、読んでみました。
例えば、大阪弁で「佑介、自分が悪いて言うてた」は、「て」を省いて「佑介、自分が悪い言うてた」と「て抜き」可能。「言う」や「思う」で「て抜き」は可能だが、「叫ぶ」では、「佑介、自分が悪い叫んでた」とはいわない。「て」を入れなければならない。英語でもYusuke said that he was wrong.○、だが、Yusuke shouted he was wrong.×とは言わない。“that”を抜くことができるのは、sayの他にthinkやhearなどの時。shoutの時には、「“that”抜き」はできない。こんな面白い例が、たくさん書かれています。
この本を読み、確かに、日本語のことばの仕組みに興味をもつと、英語に対する接し方が変わってくると実感。文法がこんなに面白いものかとあらためて感じました。
先生は、ラボには、たくさんの素材があるのだから、こうしたことも取り上げてみると、より「ことば」を運用できるようになるのではないか、と助言をしてくれています。
なかなかふだんのパーティでは、常時、とりあげることはできませんが、発表会が終わったあとなど、いくつかの文を取り出し、じっくりと眺めてみるということも、発見があって、楽しいかもしれないと感じました。重要なことは、あくまでの「子どもたち自身が、見つけること」。プラス私自身も、うまく投げかけられるように、様々なポケットをたくさん持っておくことが必要だと感じました。
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最後に、伊藤パーティから参加した子どもたちの感想と、表彰状の形になっている「任命書」全文紹介。
A(2年生)
みんなとことばのべんきょうをしてとても楽しかったです。日食まんじゅうは、ほんとにあるのかな?とおもいました。楽しかったのでまたきたいです。
R(3年生)
むずかしかったけど、楽しかったです。
Y(4年生)
すごくたのしくていい夏休の一日になったなと思いました。またきたいです。
A (4年生)
言葉も考えるのがむずかしかったけど、できた時はとてもうれしかったです。
M(6年生)
言葉をつなげるのがむずかしかった。でも楽しかったです。
任命書
あなたは2009年「ことばの実験室」に参加し、ことばのふしぎさや楽しさに気づくことができました。
あなたを「ことばの探検隊隊員に任命します。ことばのすばらしさを友だちに伝えてください。
ミッション① きょうの体験を、おうちの人に伝えよう。
ミッション② きょうの体験を、友だち3人以上に話そう。
ミッション③ 友だちと、ことばあそびをしよう。
ミッション④ 来年も、ここで会おう。
2009年7月21日 ことばの探検隊隊長 大津由紀雄
参加者全員が、一人ずつ、先生から「任命書」をもらいながら、先生が選んだミッションを約束。お母様のご報告より、きちんと実践できたお子さんもいましたね!
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子どもたちも、私も、ふだん無意識に使っている「ことば」について、考えさせられました。テュ-タ-としても、多くのことを学べた一日でした。
企画運営して下さった、テュ-タ-の皆様、ありがとうございました。
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