Home > 特集ページ

特集連載
第8回
「原始の子ども」が輝くとき(その1)

2011/6/9

絵本「かさじぞう」は墨絵に彩色をほどこして完成

 …昨年冬に刊行されたラボ・ライブラリー絵本,Get on Target Series 23 『ジョン万次郎物語』には,『かさじぞう』と『ももたろう』が収録されています。この絵本の絵を担当された本多豊國さんは,これまでもライブラリー絵本『なよたけのかぐやひめ』などの絵を担当していただいていますが,今回の絵本も,当初からやる気満々で取りくんでいただきました。
 本多さんはもともと油絵を描かれていましたが,墨絵の魅力に目覚めてからは,ずっと墨絵を中心に作品を制作されています。墨絵は伝統文化の香り高い世界ですが,いずれはその高みに登るにしても,最初はもっと楽に自由に墨絵を楽しんでもいいのではないか,そうすればもっと墨絵は先進性を発揮し,その可能性を広げるに違いないと本多さんはおっしゃいます。

『アートはハート』

 ARTはHEARTの中にあります。絵は心を表し,心に訴え,心を豊かにし,心と心を結びます。
 ぼくはあらゆるもののなかに心を見るために,自分を高めていきたいと望んでいます。そして自分の心もあるがままに表現したいと努力をしています。心のままに,心を自由に表現するために技術を習得していきます。ぼくにとって絵は「表現」というよりも「出現」であったらなあ,という思いが強くあります。このように思っているぼくにとって,墨絵は最適な画法なのです。

墨絵は自由

 墨絵は誰でもすぐ描くことができるし,何をどのように描いてもいいのです。
 和紙に墨で横に一本すっと線を引けば「地平線」です。墨絵はこれくらい自由です。ぼくはこの自由さと活力が大好きです。このあっけらかんとした力を手放したくなくて毎日墨絵を描いています。何をどう描いてもいいのですから。
 墨絵は描いた「人」あるいは「心」が丸出しになります。だから墨絵を描く人はその「生き方」=「心」に十分に注意を払わなくてはなりません。あえていえばこれが墨絵の唯一の真髄・技法といえます。いつも「心」をあるがままに自由にしておかなくてはなりません。これが墨絵の線やにじみとなって出現します。ぼくもこの「生き方」=「心の技法」を身につけたいと勉強中です。

墨絵はパワー

 あらゆる言動の源は「心」だとぼくは思っています。心で思わないことは現実には起こらないからです。「心」はどこにあるのかわかりませんしその姿を見ることもできません。しかし「心」はあります。墨絵はこの見えない「心」を見えるように描くのが役目です。そのきっかけをつくってくれるのが,湧きあがってくる想像力やインスピレイションです。このパワーは,できるだけ無心になって,限界をつくらないようにすることでしか得られません。この超越的な力がやってくるとすばらしくいい気分になります。このパワーこそが墨絵の源です。

原始の子ども

すべての人に「原始の子どもが住んでいる」  子どもは子どもであって,小さなおとなではありません。おとなはもともと子どもで,大きくなった子どもです。おとなとは子どもが社会に馴染んでいくために,自分のなかの野生(生命力や想像力などのエネルギィ)を失ってしまった,衰えた子どもかもしれません。しかしおとなのなかにも,「小さな子ども」はいます。ピュアな力のみなぎった,「子ども」がいます。子ども自身とおとなのなかの子どもを,ぼくは「原始の子ども」と呼んでいます。
 おとなは絵がわからないとか,絵は役に立たないなどといってしまいます。「原始の子ども」は,損得なしに全身全霊でお絵かきを楽しみ,遊びます。表現だとか芸術だとか思わずに,想像力そのものになって描いています。それは根源的なエネルギィで,人びとを慰め,力を与えてくれます。「原始の子ども」と心はひとつに繋がっているように思えます。「原始の子ども」は,「わかること」とか「役に立つこと」とは無縁です。

絵の力

 絵は出会い頭に力を与えます。理屈は何もありません。そこにあるのです。絵はおとなたちに根源的な凄い力を与えてくれます。一人ひとりがもともともっている,「原始の子ども」の力を思い起こさせその力を回復させてくれるのです。癒し,慰め,喜びを与え,人生を変えるくらいのカタルシス(自己浄化作用)をもたらします。多くのおとなたちは「原始の子ども」を忘れてしまい,思い出すこともなく,先入観から絵の力を認識することすらしません。したがってこのすばらしい絵の力を知らず,恩恵を受けることもありません。とても残念なことです。
 子どもは「原始の子ども」そのものですから,絵と一体となってしまいます。ぼくの考えでは,子どもには絵は自由に描かせればよくて,おとなたちはその環境をつくるだけでいいのです。あとは「いいな,いいな」と子どもたちと共感することで,おとなも育っていきます。  ぼくは絵本を制作するとき,いわゆる「子どもむけ」などと意識したことはありません。自分のなかの「原始の子ども」を信頼し,その力を全力で発揮します。そして楽しく夢中で描くだけです。それで「原始の子ども」どうしが出会い,結びついていけば最高にうれしいのです。墨絵はこの子どもの世界によく似ています。だれでも自由に楽しむのです。  ぼくは子どもやおとなのなかの「原始の子ども」,すなわち心とともにいます。


・・・つづく 第9回 「原始の子ども」が輝くとき(その2)   


「ガンバル日本プロジェクト」について

「ガンバル日本」(Gambaru Japan)プロジェクトは東日本大震災に対する支援を目的とした活動です。

 私たちにできることは多くはありません。しかし小さいからといって何もしないのではなく行動することがだいじだと思います。準備に時間がかかってしまいましたが「ガンバル日本」のプロジェクトを立ち上げ,被災者の方たちへの支援を,できることをやっていきます。さまざまな著作物の販売の収益金の寄付や,子どもたちの目の前で絵本を完成させていくイベント「ライブ絵本」を,被災地で行なったりしていきます。子どもたちに笑顔が戻るまでやり続けるなどとはいえません。ほんの一瞬の微笑みのために,私たちは活動していくことが精一杯です。しかし私たちはできる限りやり続けていきます。その先がもしも明るい未来になるのであれば,と考え私たちは「ガンバル日本」というプログラムを実行していきます。つきましては皆様のご支援を賜りたくお願い申しあげます。

「ガンバル日本」のプロジェクトを支援していただける方がおりましたら,ぜひ私たちにご連絡をください。皆様のご協力をお待ちしております。  詳細はホームページでご紹介しておりますのでどうぞご覧ください。

http://www.nekomachi.com/GambaruJapan/
ガンバル日本プロジェクト


おはなしをうかがった方
本多 豊國先生
本多 豊國先生(ほんだ・とよくに)
1945年東京生まれ。幼少の頃より虫と絵を描くことが大好きだった。将来なりたかったのは絵描きかファーブルのような昆虫学者。 1964年より本格的に絵画活動を開始。1987年イタリア・ボローニャ国際絵本原画ビエンナーレ入選を皮切りに次つぎと欧州で絵本の賞を受賞。1990年にはフランス・ラニオン国際絵本原画ビエンナーレでグランプリ・イカロス賞を受賞。翌年ブラチスラヴァで異例の特別展示を行なうなど国賓級の待遇を受ける。その後作品が欧州各国を巡回展示される。1999年京都府の禅定寺に横幅45メートル高さ8メートルの巨大壁画を完成させる。2000年,アメリカを描く「USA 50」のプロジェクトを開始。作品展示や墨絵ライブなどで墨絵の普及を図る。 2011年東日本大震災に衝撃を受け,独自に支援プロジェクト「ガンバル日本」(Gambaru Japan)を立ちあげる。いままで培った世界中のネットワークを駆使し,現在,被災地を支援するプロジェクトを進行中。
バックナンバー

バックナンバーでは,英語や子育て,国際交流,物語,キャンプ,劇活動など,豊富な分野にわたって,専門の方々に語ってもらっています。 興味のある方はこちらからご覧下さい。

特集連載バックナンバー

ラボ・パーティ ビデオクリップ
ラボ・パーティ(プレイルーム)の実際の活動の様子を動画でご紹介します。
 
Member Information

2017年度,年間共通ソングバード

2017.3.6 図解・映像は,準備ができ次第アップしていきます。

2017年スプリングキャンプ『全国テーマ活動交流ひろば』エントリーについて

2017.2.13 早春のラボランドに全国のラボっ子が集い,テーマ活動を発表し合う『全国テーマ活動交流ひろば』。 今年も1班・2班ともに実施します。

2016年度,年間共通ソングバード(2/17更新)

2017.2.9 図解・映像は,準備ができ次第アップしていきます。 【2/9更新】Cambric Shirtの動画をアップしました。 【2/17更新】Red River Valleyの動画をアップしました。

2016-17くろひめウインターキャンプ2班ならびにスキーキャンプ終了報告《医療報告含む》

2017.1.6

早朝からの雪で飾られました。2010.12.24 あたらしい時を刻んで……