特集連載 第4回 未来につながることば(その2) | 幼児教室・英語教室なら【ラボ・パーティ】

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特集連載
第4回
未来につながることば(その2)

2011/03/15

ラボ・パーティの子育て応援小冊子

 子育て中のお母さん、お父さん、家族にとって、子どもの成長はかけがえのない喜びです。けれども、その道のりは迷いや悩みの連続でもあるでしょう。「子どもにとって本当に大切なことは何だろう」と思うとき、この冊子がみなさんの考え方を深める手がかりになることを願って刊行いたしました。
 今の時代、私たちが好むと好まざるとにかかわらず、必要以上にたくさんの情報が入ってきます。そのなかで自分の子育てでたいせつにしたいことを見失わずにいることは、とてもむずかしいことではないでしょうか。
 この冊子は、近々、小学校で始まる「英語教育」についてのものです。ちまたにはたくさんの児童英語教室があり、早くから学習を始めることをすすめています。「うちも始めなきゃ…」とあわてる前に、子どもの「英語教育」についてちょっと立ち止まって考えてみませんか。
 今回は、日本だけでなく世界中の小学校英語の事情にくわしい英語教育の専門家、本名信行先生(青山学院大学名誉教授)におはなしをうかがいました。お子さんの教育について参考にしていただけましたら幸いです。

ラボ・パーティの子育て応援小冊子
『未来につながることば 小学校年代の英語との出会い方』より

小学校で英語教育に求められることは?

 日本でも2011年までには、すべての小学校に外国語(英語)活動が導入されることになりました。
 小学校における外国語(英語)活動では、中学校で行なわれている文法などの勉強をするのではなく、幅広い言語に関する能力や、国際感覚の基盤を身につけることをめざします。新しい学習指導要領では、英語の音声や基本的な表現に慣れ親しみ、言語や文化に対する理解を深めながら、積極的にコミュニケイションをしようとする態度を育て、中学校での学習とのスムースな接続を図るとあります。
 ところで子どもたちに「英語」を教えるのは、とてもむずかしく、根気のいることであることをわかっていなくてはなりません。一般に、子どもは外国語ののみこみが早いといわれますが、それは「環境が整っていれば」、の話です。日本や中国のようなところで英語を学ぶことはたいへんな努力が必要ですし、子どもの心の成長に合ったプログラムであることがたいせつです。
 子どもは3歳にもなれば、感性と知性が働きはじめます。ですから英語の歌や踊りをくりかえすだけでは、すぐに飽きてしまいます。また、単語や決まり文句をただ暗記させる方法は長続きしません。絵カードやロールプレイ、ゲームといろいろくふうしてみても同じです。先生や音声CDについて言わせるやりかたもあまり喜びません。これらの方法は模倣、オウム返し、暗記をベースにしているので、子どもにとっては楽しくないのです。子どもの気持ちにふれ、想像力にはたらきかけ、創造力をかきたてることがたいせつなのです。

幼少期の英語との出会い方

 これからは小学生はもちろんのこと、幼児期からも、できれば英語に親しんでほしいと、私は切に願っています。けれども、これは簡単なことではありません。日本ではこれまでさまざまな私立学校や団体、企業が、あれこれチャレンジしてきましたが、ほとんど失敗してきたと言っても過言ではないでしょう。そのくらいにむずかしいことなのです。
 では、幼児や小学生が、できるかぎり楽しく、無理なく、かつ確かなかたちで英語に出会い、親しみ、身につけていくにはどのようであればよいのでしょうか。私なりに考えている基本的なポイントを最後にあげておきましょう。

教材

 子どもが英語を学ぶ教材は、子どもの想像力や感性を刺激するものであってほしいと思います。単にくりかえしや暗記を目的としたものではなく、それ自体が子どもの心をわくわくさせ、英語の活動につながるようなものが望ましいと考えます。たとえば、絵本やおはなし、マザーグースなどが有効でしょう。

母語である日本語をたいせつに

 人はどの世界に生まれても、さまざまな人や自然と出会い、経験を通して、心の土台を築いていくとき、まずは母語で自分をつくっていきます。子ども時代は母語教育がたいせつだというのは当然のことであり、外国語教育においても決して忘れてはならない大事なポイントです。英語を学ぶ場合も、英語と日本語のふたつのことばの響きに同時に、しかしそれぞれに楽しく自然に触れるといった知恵とくふうと努力が必要でしょう。いわゆるダイレクト・メソッド(母語を介さず、直接外国語で教える方法)は、子どもにとってはとても不自然で息苦しいものになるでしょう。英語と日本語の両方が使われれば、日本語は理解を促し、英語は新しい世界へいざなうという役割をはたすでしょう。

国際交流の経験

 せっかく学んだ英語を実際に使って、英語圏のいろいろな国や地域にホームステイするなどの国際交流は有効でしょう。自分と異なる文化にふれることで、今まで考えたことがない問題にぶつかることも少なくありません。けれども、それに対応するなかで「社会力」と「言語力」、そして「異文化の人びととコミュニケイションする力」が育まれていくことでしょう。

指導者

 これはもっともたいせつなポイントです。英語について知っているだけでは指導者として十分ではありません。知識を教える「先生」としてだけではなく、さまざまな役割を担う必要があるでしょう。子どもの英語との出会いを印象的につくるパフォーマー(表現者)でもあるでしょう。また子どものやる気や能力を引き出すファシリテイター(学びの支援者・促進者)でもあるでしょう。そしてなにより、子どものようすをていねいに見て、コミュニケイションをはかれることがたいせつです。心と身体をフルに活動させて子どもと接することができる指導者であってほしいと思います。

おわりに

 中国を訪れたとき、英語教育の関係者と話をしました。ある先生はこんなことを言いました。「中国でいちばん簡単な仕事は英語を教えることです。中国でいちばんむずかしい営みは英語を学ぶことです」。これはまさに、核心をついたことばではないでしょうか。中国では小学校から英語を教え始め、最近では幼稚園でも教えるところがあります。そして中学、高校、大学、大学院でも必修科目とされていますが、その成果は十分にあがっていないと、この先生はなげくのです。
 旺盛な学習意欲をもっている子どもが、早いうちから英語を学ぶ良さはたくさんあります。けれども子どもの英語教育はとてもむずかしく、根気がいることであることを忘れずにいたいものです。そして子どもの発達に適した方法で行なうことが、将来、国際言語としての英語を使うことができる人材を育てることにつながるのです。それには、おとなが、単に「早く」ではなく、「なぜ英語を学ぶか」ということについて、しっかりとした考えをもっていなければならないでしょう。そして、ぜひ子どもたちには英語を「もうひとつの私たちのことば」として、夢と希望をもって学んでほしいと願っています。



おはなしをうかがった方
本名信行先生
本名信行先生(ほんな・のぶゆき)
1940年生まれ。
青山学院大学国際政治経済学部教授を経て、現在同大学名誉教授。
青山学院大学大学院修士課程修了。
国際異文化間コミュニケーション研究学会(IAICS)会長。(2007-2009)
日本「アジア英語」学会会長(1997−2009)。
ラボ言語教育総合研究所研究員。
研究分野は、多文化言語としての英語、異文化間リテラシー、言語意識論など。 世界各国の路地裏から行政機関の文化社会政策まで広く深く英語事情に精通。主な著書に『世界の英語を歩く』(集英社新書)、『英語はアジアを結ぶ』(玉川大学出版部)などがある。
 文部科学省の中央教育審議会初等中等教育分科会の外国語専門部会委員もつとめる。(2003-2010)
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