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特集連載
第47回
森のチカラ〜こころとからだを癒し・育む

2015/5/1

鹿島 岐子/かしま みちこ

 鹿島 岐子/かしま みちこ
 今月は,「ラボランドくろひめ」がある長野県信濃町で森林メディカルトレーナーとして活躍されている鹿島岐子さんに,「こころとからだを癒し・育む森の力」について書いていただきました。
 また,鹿島さんはお子さんをラボ・パーティに通わせている保護者でもいらっしゃいます。保護者の立場からご覧になったラボ・キャンプの魅力も書いてくださいました。黒姫高原の大自然のなかでの鹿島さんご自身の子育て体験に裏打ちされた,「森林療法」の魅力をどうぞお読みください。

森との出会い〜子育ての糧

 主人の故郷,ラボランドのある長野県信濃町での生活は,長男が1才のときスタートしました(ラボとの出会いは息子が3才のとき)。以来,美味しい水と空気に恵まれた森の中での暮らしが始まりました。長男は外遊び好きで,いかなる天気でも森や庭で過ごす日々でした。冬は生まれて間もない長女をダウンで何重にも包み,雪で車輪が回らないベビーカーを抱えて歩き,吹雪の日も森・・・今振り返れば,私設「森の幼稚園」のような毎日でした。長男は天候も意に介さずひとりで森を走り回り,そこにあるもので遊びつくしていました。
 主人は忙しく,不慣れな環境で小さな子どもと向き合う生活に,静かながら閉塞感も感じた時期,お茶とおやつを持って森でのんびり過ごす時間は子どもにとっては解放のとき。母である私にとっても走りまわる子どもの傍らで雪や土の上に寝転がり,木々の枝ぶりや流れる雲を眺め,霧まく幻想的なようすなど,季節の移ろいに身をおくことは癒しの時間であり,子育ての糧になっていました。それが後に出会う「森林療法」につながる私の「森の原体験」でした。 信濃町の高原から黒姫山・妙高山の眺望

癒しの森事業「森林療法」との出会い〜森と人を繋ぐ

 そんな暮らしの中で・・・信濃町では2002年に人と森を共に健康にし,集客交流だけでなく町づくりを目指そうという町民有志の発起があり,2003年住民と行政の協働による「癒しの森事業」(C.W.ニコル氏の提唱から生まれたエコメディカル・ヒーリングビレッジ事業)が始まりました。全国に前例のない森林保養地への取り組みは,まず担い手として森を案内する森林メディカルトレーナーと,滞在いただく癒しの森の宿の人材養成講座からはじまりました。
 次女が2才になり専業主婦生活10年を経て,ちょっと外の空気を吸いたいなぁ・・・という気軽な受講のなかであらためて学んだ,森の癒しの力,「森林療法」の奥深さに自分の実感したことの裏付けを確信しました。「森っていいんだ。やった,私はいいところに住んでいる!」と,3人の子育てに追われていた専業主婦生活が一変する縁となりました。
 それから現在まで森と人をつなぎ,人に寄り添うもてなしと町づくりを模索しながら活動しています。癒しの森事業として企業・団体・大学の契約数が32になり,ストレスマネジメント,コミュニュケーション力向上を目的にした企業研修等と,個人のお客様の対応をさせていただいています。

森の力〜こころとからだに効く

 *「失われた時間を取り戻す〜今,ここにいる」
 森ではいつもとちがう時間の流れを感じます。日常,手放せない時計・携帯電話を忘れ,頬をなでる風,のびのびと枝を伸ばした木々や葉っぱのゆったり揺れるようすや音,鳥の声,せせらぎの音と水面のきらめき,森の香りなど・・・五感を総動員して普段見逃している当たり前のものを丁寧に感じ,味わうように過ごしていただきます。それが普段心を占める「先のこと」,「今までのこと」からちょっと開放された「今,ここにいる」時間になります。忙しい毎日を送る方がたにとって,それは思う以上に得がたくぜいたくなものです。森のあらゆる刺激が自律神経に働きかけこころとからだが整います。肩の力が抜け,呼吸のリズムも変わり,表情まで変わってきますよ。そんな森の持つ力や森での「森林療法」のようすをちょっとご紹介します。

 *フィトンチッド(森の香り)
 森の香りは私たちの心身に働きかけ「快適さ」をもたらしてくれます。その香りに含まれる芳香性物質の総称をフィトンチッドといいます。初夏は1年で一番揮発量が多く,香りの濃い季節です。木の自然治癒力であり,虫への忌避効果や菌などを抑制するフィトンチッドに満たされた森で過ごし,鎮静効果が生まれ,高血圧を下げるなど私たちの心身に安らぎをもたらしてくれます。枝先のさまざまな香りを楽しむことは森ならでは。ひときわ香りたつ初夏のころは,森は鳥の子育ての時期でにぎやかさを増すのも楽しみです。

御鹿池で黒姫山に向かって深呼吸  *深呼吸〜自律神経の調整
 「呼吸は人生を変える」・・・この言葉の通り,普段無意識にしている呼吸を意識的に変えることで,心と身体の状態の調整ができます。深くゆったりした深呼吸はリズム運動になり平常心を生み出すセロトニン神経を活発化させます。そして自律神経のバランスを整え身体の血行改善,心の安定につながります。また,森の中では生まれたての酸素,フィトンチッド,マイナスイオンなどを身体に取り入れることができ,全身の細胞を活性化させ免疫力のアップになります。ゆっくり吐くことで副交感神経が刺激され,手足がじんわり温かくなり,血行促進の即効性を実感できます。

 *「1/f」のゆらぎ
 五感で感じる自然のハーモニー,鳥の声や風の音と共にふわりふわり,サラサラといった揺れ・音は「1/f」といわれるゆらぎ(時間とともに変化する不規則な変動)をもちます。森の中ではそんなゆらぎに包まれ,その心地よさが心安らぐ癒しの効果となって現れます。

新緑のなかで「セルフカウンセリング」。お気に入りの木を見つけてひとりで過ごす時間  *森がカウンセリング
 森で「気に入った場所」を見つけ,シートの上で一定の時間をひとりで過ごしてみましょう。ひとりの時間は自分と前向きに内省的に向きあう時間です。話を聞いてくれるカウンセラーがいなくても森に受容されてセルフカウンセリング(森「が」カウンセラー)になります。どなたかご一緒の場合はいつもより受容的に相手の話を受け止め,自分の思いを素直に自己開示ができますので,コミュニケーションをはかる場にも適したフィールドといえます。心が緩んだら,自然の中で森のティータイムを楽しみましょう。

 以上,信濃町の癒しの森事業と森の癒しの効果についてお伝えしましたが,百聞は一見にしかず!5月の信濃町はようよう春がはじまり,雪に覆われ眠っていた森は目覚めの季節。木々の新芽は産着のようなやわらかい白やピンクをまといます。これから森は1年で一番のやさしい彩から梅雨にかけて緑の季節へのドラマチックな変化をしていきます。至福に包まれるような新緑の黒姫にどうぞお越し下さい。

ラボとの関わり〜保護者として

 最後に私自身の保護者としてのラボとの関わりを記します。私の子育ては森に助けられ,若月テューター(先生)に丁寧に見守っていただきながら,ラボで親子ともに楽しむ時間を得ることができました。ラボの魅力はメソッドとしての教材と学び方,そしてパーティ(子どものグループ)・テューターの魅力です。さまざまな年齢の子が集う,縦のつながりのなかで育った子どもたちは,自分がしてもらったように小さな子どもたちにやさしく接することができるようになりました。テーマ活動(英語の劇活動)で物語を表現し作り上げる協働のなかで,自己表現と他者受容をしながら,社会力が養われる仕組みが魅力です。言語を媒体として人間性を育む場だと感じます。3人の子どもたちは心に種を持ちました。テューターの真摯で愛情に満ちた姿から,子どもたちも親も多くを学んでいます。これからもお世話になり親子でラボを楽しんでいきたいと思っています。

ラボ・キャンプは成長へのステップ

 我が家のラボ・キャンプ・デビューは子ども3人を連れ,自宅から車で5分のラボランドでのファミリーキャンプでした。お世話になったシニアメイトには「うちの子も将来こんな素敵に育ってほしい」と信頼と安心を感じ,そのサポートとほかの家族との活動のなかで子どもと客観的に向き合うことができたのが魅力でした。親子別時間の配慮もあり,なかでも「ハイロープ・コース」への挑戦は得難い経験となりました。自分の限界に挑戦する自己対話とペアになったバディの励ましがあきらめない力になることを実感するものでした。
 そして,3人の子どもたちだけのラボ・キャンプ・デビューもラボランドでした。その後はそれぞれ自分で決めたキャンプ地へ…子どもにとっては初めての仲間と出会い信頼関係を作ること,自然の中で活動すること,初めての交通機関を使いキャンプに行くこと,すべてがチャレンジでした。
 自然は五感で感じる刺激に満ちています。非日常ともいえる自然の中だからこそキャンプでは自分を全部使って遊びきることができ,それが自信につながり,成長へつながると思います。解放感と達成感は自己受容だけでなく他者への思いやりも育み,生きる力となって一回り大きくなった頼もしさを感じました。さみしい・怖い・虫が嫌い・・・そんな心配が楽しさに変化し自然に受け入れる過程,こころの変容が成長だと思います。我が家では家族であちこちキャンプにも行きますが,ラボ・キャンプには家族でのお出かけとはまったく別の意義があると感じています。お子さまの挑戦の機会に,ラボ・キャンプへの参加をおすすめします。

おはなしをうかがった方
鹿島 岐子
鹿島 岐子(かしま みちこ)
1966年 長野県飯山市生まれ
高校卒業後 長野市内百貨店勤務
信州大学教育学部入学 卒業
長野市内のベンチャー企業でスーパーバイザーとして勤務。沖縄から北海道まで出張しつつ,冬は競技スキーに邁進。結婚を機に夢の専業主婦生活,そして信濃町へ。
2003年第1回信濃町森林メディカルトレーナー養成講座受講
2004年信濃町森林療法研究会「ひとときの会」設立,会長。現在に至る。会員80名
趣味は山登り,地元素材(野菜・おから・野草)を使ったスイーツ作り,雪国の知恵の保存食作りなどの手仕事。
3人の子育て中にたまたまの縁で「森林療法」を学び,ライフワークとして森と人を繋ぐことを目指した活動を続ける。C.W.ニコル氏のアファンの森での児童養護施設の子どもたち,知的・視覚障害者,東北震災支援の心の森プロジェクトにも参加。
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