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特集連載
第43回
ハリウッドへの道はラボからはじまった

2015/1/1

松崎悠希/まつざき ゆうき

 松崎悠希/まつざき ゆうき
 俳優

 みなさま明けましておめでとうございます。
 今月の特集記事は,ラボOBの松崎悠希さんより寄稿いただきました。
 松崎悠希さんは,高校卒業後単身でニューヨークに渡り,様々な困難を経験し,現在は,アメリカのハリウッドを拠点として,映画やドラマなどに出演し,映画俳優として活躍されています。その活動の原動力は,小さいころに体験した,表現することの楽しさにあったようです。アメリカでの経験やラボ会員時代のエピソードなど,話題満載のお話をお読みください。

ラボに入ったきっかけと型やぶりなラボっ子時代

 7歳の頃,母に連れられ,宮崎のとあるパーティの見学に行きました。するとちょうど『だるまちゃんとかみなりちゃん』のテーマ活動(英語と日本語の劇)をやっていまして,当時から目立ちたがり屋だった僕は,見学生だったにも関わらず一週間でセリフを全て覚え,オーディションでだるまちゃんの役を取ってしまったのです。演じることが大好き,目立つことが大好き,そんな息子のことを思った母が一念発起し26年前に立ち上げたのが,ラボ松崎パーティだったのです。

 僕の俳優としての素養は,もちろんラボで培われました。7歳から18歳で宮崎を出るまでの11年間,一度も「休養」する事なくテーマ活動をやりまくり,ステージに立ち続けました。テーマ活動をする上での僕の目標は常に一つ,「真面目に観客を笑わせる」。僕たちは,観客の意表を突くため,他のパーティでは到底ありえないような「ハイブリッド・テーマ活動」などを作って演じていました。例えば,松崎パーティ15周年で発表した『ガンピーさんのふなあそび』の船旅に突如現れる「トロル」,

「May I come with you? ぼくもいっしょにつれてって!」
said the Troll. と,トロルがいいました。
「I’m sorry, you’re too big. ダメだよ,君は大きすぎる。」
said Mr. Gumpy.  と,ガンピーさんは答えました。
「Now, I’m coming to gobble you up! ならば,きさまをひとのみにしてやるぞ!」
roared the Troll. と,トロルはどなりました。

(船のオールを二つに叩き折るガンピーさん)

「Well, come along! I’ve got two spears! さあ来い,こっちにゃ2本のやりがある!」

・・・とまあ,こんなのを大まじめにやっていたのです。でもこれは,『ガンピーさんのふなあそび』と『三匹のやぎのがらがらどん』を完全に覚えているからこそできることなのです。

 ラボのお話を聴き続けたおかげで,英語耳も養われました。微妙な発音の違いが聴き分けられるようになったのです。これは,渡米してからとっても役立ちました。でも,唯一心残りがあるとすれば,当時,「発音記号」の使い方を知らなかったことです。僕は,Appleの「ア」と,Fatherの「ア」,の発音が違うことには気付いていたのですが,カタカナではどちらも「ア」なので,その2つの音の違いをどう表現したら良いのか分からなかったのです。当時から発音記号を知っていれば!! 今活動しているラボっ子の皆さんは,「発音記号」,ぜひ学んでみて下さいね。聴こえる全ての音を文字で表せるようになるので気持ちいいですよ!

夢のハリウッドへ

 ラボで11年間舞台に立ち続けた僕が,映画俳優を目指して渡米したのは2000年7月,高校を卒業してほんの4ヶ月後のことでした。日本ではなくアメリカで俳優になると決めたのは,俳優たちが実力で役を取り合う「オーディション」というシステムに惹かれたからです。それに,ハリウッド映画に一作品でも出演できればそれだけで大金持ちになれる,と考えたからです。

 渡米時の所持品は「勢い」と「憧れ」だけ。どうすれば俳優になれるかという綿密なプランなどありません。そんな無謀な夢を抱いた18歳の青年に,アメリカは厳しい洗礼を浴びせかけました。渡米して4日目,ニューヨーク滞在中に所持金を全て盗まれてしまったのです。しかし,それでも僕は夢を諦めきれず,それから9ヶ月間,路上で歌って生活費を稼ぐ生活を続けチャンスを伺いました。

 そんなある日,とあるB級アクション映画の日本人の悪役のオーディションに呼ばれました。バスに3時間揺られてオーディションに参加したところ,なんと出演オファーが! それから2か月間,ペンシルバニア州で人生初の映画撮影に参加しました。その時の監督が「映画ならニューヨークじゃなくてハリウッドだよ」と助言してくださって,それに従い,渡米してから1年後に拠点をハリウッドに移しました。

 ハリウッドに移り住んでからも精力的に舞台出演や学生映画などの撮影に参加していたのですが,メジャーな作品への出演はなかなか決まりませんでした。それも全て,あの忌々しい「オーディション」というシステムのせいです!「自分こそは役が取れる」「自分が一番になる」という自信にあふれた何百人もの俳優が演技を競い合い,「たった一人だけ」がキャストされる,という弱肉強食のシステムこそが,僕が長年憧れた「オーディション」だったのです。実力も経験も無い者にとって,これほどの地獄はありません。チャンスが回ってきたのは数か月後,映画「ラストサムライ」のオーディションでした。一番にならなければ役が取れないのであれば,俺は一番デカい声で叫んでやる!!と,大声を張り上げたところ,ななな,なんと出演オファーが! なーるほど!! 声量で一番になれば役が取れるのか!・・・まあ,そんなわけはありません。

表現することの楽しさを学んだテーマ活動

 俳優という職業は全身を使って表現する職業ですが,僕が表現することの楽しさを学んだのはテーマ活動でした。頭の中で情景やキャラクターを思い描くだけではなく,そこから一歩踏み出して全身を使って表現する,・・・これが実は結構難しいんです。

 幸い僕はこの「表現力」を幼い頃からラボで鍛えていたので,スムーズに映画の世界に入って行くことができました。それから,国際社会で生き残っていくために必要な「主張する力」もテーマ活動のおかげで身につきました。よく日本人は,発言力が無い,自己主張ができない,などと言われますが,ラボっ子はテーマ活動を作る際に自分の意見を言うことに慣れているので,国際社会で通用する「発言力」を知らず知らずのうちに鍛えているのです。

 そして最後にもちろん「英語力」です。子どもの頃から英語に親しみ,耳が英語に慣れていたので,リスニング力は人一倍あります。幼い頃から毎日のように英語を聞いていたので,音楽で言うところの「絶対音感」と似たようなものが身についているのです。

 でも,ここで中高生のラボっ子に一つだけ警告しておきます。「ラボをやっているから,文法や単語の勉強をしなくても無条件でそれなりに英語ができる」と考えてはいませんか?その認識は「大」間違いです!! 日本人が日本語を学ぶうえで,「普段の会話」だけでなく「国語」を勉強するように,英語も「普段の会話」と「文法」を学ばなくてはいけないのです。ラボは言うなれば「普段の会話」の練習です。日本のどこを探しても,ラボほど多彩な英語のライブラリー(CDと絵本テキスト)は存在しません。中高生になったら,そこに文法を当てはめ,それぞれのセリフに登場する単語を完全に理解することで,何年経っても消えない本当の英語力が身につくのです。これを怠ると,ラボを卒業して大体1,2年で英語をすっかり忘れてしまうので気をつけてくださいね。もちろんラボの良さ,楽しさは「英語」だけではないですが,せっかく育った英語耳を失うのはもったいないですよ!!

自分にとってのアメリカ

 渡米する前は,アメリカという存在を怖く思っていました。自分とは違う価値観を持った人々がひしめく異質な国,それがアメリカだと考えていたのです。しかし渡米して何年も経ち,英語力が身に付くと,その認識は間違っていることが分かってきました。日本人もアメリカ人も,人間的な部分は全く変わらなかったんです。TPOをわきまえ,敬語を使うべき場所では敬語を使う(そう,英語にも敬語があるんです!!)。挨拶とお礼ははっきりと言うように心がける。・・・ね?まるで日本みたいでしょ?言葉の壁の向こうには見慣れた風景が広がっていた,というのはとても大きな発見でした。

 渡米して,早いもので,もう14年が経ちました。「ラストサムライ(憲兵役)」,「硫黄島からの手紙(野崎役)」,「ピンクパンサー2(ケンジ役)」,「パイレーツ・オブ・カビリアン4生命の泉(ガーヘン役)」など,多くの作品に関わって学んだことは,

1,「オーディションは地獄,ああ地獄。」
2,「ハリウッド映画に出ても大金持ちにはなれない。話が違う!」

そしてもう一つ,

3,「失敗,間違いを恐れない」

失敗って,自分の欠点が分かって最高ですよね。元ラボっ子俳優 松崎悠希。これからもハリウッドでがんばりまーす!

おはなしをうかがった方
松崎悠希
松崎悠希(まつざき ゆうき)
俳優
経歴
1981年9月24日生
ハリウッドで活動する宮崎県宮崎市出身の日本人俳優 33歳
宮崎県立宮崎大宮高等学校卒
7歳より11年間宮崎でラボ活動。高校卒業後,アメリカで俳優になるため渡米。 直後にニューヨークで全所持金を盗まれホームレスになるも,俳優になる 夢を諦めきれず路上で歌って生活する。 B級アクション映画にキャストされたのをきっかけにハリウッドに移り住み,『ラストサムライ』『硫黄島からの手紙』『ヒーローズ』などに出演し 俳優としてのキャリアを積む。映画『ピンクパンサー2』では,ケンジ役としてスティーブ・マーティン,アンディ・ガルシアなどと並びメインキャストとして出演。2011年に公開された「パイレーツ・オブ・カビリアン 生命の泉」では,日本人として初めて海賊ガーヘン役で出演し話題を集めた。WOWOWで放送された米ドラマ「ニュースルーム」の第6話では電力会社の報道官として 出演し,出演料を全額福島に寄付した。2013年にはアジア初出演となるフィリピン映画「インスタント・マミー」に主役級で出演し,東京国際映画祭主演女優賞を獲得したユージン・ドミンゴの恋人役を演じた。現在はリドリー・スコット製作,歴史改変SFドラマ「The Man in The High Castle 高い城の男」の撮影中。
オフィシャルフェイスブック https://www.facebook.com/matsuzaki.yuki

主な出演作品
ラストサムライ (官憲)
硫黄島からの手紙 (野崎)
ピンクパンサー2 (ケンジ)
ヒーローズ
パイレーツ・オブ・カビリアン 生命の泉 (ガーヘン)
メル&ジョー 好きなのはあなたでしょ (トシ)
ニュースルーム (ダイスケ・タナカ)
リノから来た男 (ツバサ)
INSTANT MOMMY インスタント・マミー (カオル)
BSプレミアム 大岡越前2 留吉
The Man in The High Castle 高い城の男 ナカムラ
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