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特集連載
第3回
未来につながることば(その1)

2011/03/01

ラボ・パーティの子育て応援小冊子

 子育て中のお母さん、お父さん、家族にとって、子どもの成長はかけがえのない喜びです。けれども、その道のりは迷いや悩みの連続でもあるでしょう。「子どもにとって本当に大切なことは何だろう」と思うとき、この冊子がみなさんの考え方を深める手がかりになることを願って刊行いたしました。
 今の時代、私たちが好むと好まざるとにかかわらず、必要以上にたくさんの情報が入ってきます。そのなかで自分の子育てでたいせつにしたいことを見失わずにいることは、とてもむずかしいことではないでしょうか。
 この冊子は、近々、小学校で始まる「英語教育」についてのものです。ちまたにはたくさんの児童英語教室があり、早くから学習を始めることをすすめています。「うちも始めなきゃ…」とあわてる前に、子どもの「英語教育」についてちょっと立ち止まって考えてみませんか。
 今回は、日本だけでなく世界中の小学校英語の事情にくわしい英語教育の専門家、本名信行先生(青山学院大学名誉教授)におはなしをうかがいました。お子さんの教育について参考にしていただけましたら幸いです。

ラボ・パーティの子育て応援小冊子
『未来につながることば 小学校年代の英語との出会い方』より

はじめに

 アジア諸国は、英語教育をとても重視し、5〜10年前から、小学校英語を実施しています。日本でも、「小学校英語の必修化」が決まり,おそくとも2011年までに、全国の小学校で英語が導入される運びとなっています。
 英語はなぜ、そんなにだいじなのでしょうか。そして小学生年代にはどのように教えたらよいのでしょうか。

英語ってどういうことば?

 私たちが学び、教えようとする「英語」とは、どういうことばなのでしょうか。現在、英語は他の言語にはない特徴を もっています。

英語を使う人の多さ

 まずひとつは、英語を使う人の数の多さです。英語を公用語あるいは通用語にしている国(地域)は70か国におよび、世界の約3分の1をしめています。また、その他の国々で、英語を「国際言語」として学習している人の数もとても多いのです。そのため、英語の話し手はネイ ティブ・スピーカーよりもノンネイティブ・スピーカーのほうが多く、英語はノンネイティブどうしでも使われているという状況です。そのような言語は他にはないでしょう。日本人の立場からいうと、英語は英米人とだけ話すことばではなく、アジアや南米、イスラム圏などの国ぐにの人とも交流するのに役立つことばとなっているのです。「国際言語」ということは、英語は特定の国の人びととだけでなく、世界中のいろいろな国の人びとと話すためのことばになったということなのです。

英語はひとつではない

 インドでマクドナルドの店は人気スポットですが、ビーフバーガーはありません。牛が神聖な動物であるインドではビーフを食べるということはタブーなのです。そのかわりに、人びとはおいしいチキンバーガーやマトンバーガーをほおばっています。
 ことばもこれと似ており、英語が世界に広まれば、世界にさまざまなタイプの英語が生まれます。たとえば英語を母語とする国の人びとが、それぞれ独特の英語を話すように、ノンネイティブの人びとも、それぞれに特徴のある英語を話します。ヨーロッパではお国なまりをもった英語が尊重されています。また、英語であいさつするとき、インド人は合掌しながらすることがあります。
 このように英語を話すからといって英米人のように話し、ふるまわなければならない、ということはないのです。むしろ英語は多様であるからこそ、共通語になることができるのです。世界のさまざまな国の人びとが、それぞれの特徴をもちながらも「英語」を話すことに よって、いっしょに活動することができる。このような「国際的な活動をするためのことば」という英語の役割を、私たちはわかっておく必要があるでしょう。
"I speak English. But I am not English, I am Japanese."ということです。

日本人にとって英語とは?

 これからますます国籍や文化の違う人びととの交流がさかんになることでしょう。こういった人びとの往来をつなぐことばのひとつが英語なのです。外交官や商社マンでなくとも、どんな仕事につこうとも英語が必要となるのです。英語を使うことによってビジネスチャンスや交流が広がるでしょう。
 そのために、私たちは、英語は日本人の「もうひとつのことば」であることを意識し、積極的に英語を使うことがたいせつです。日本では、電車の車内案内やデパートの館内アナウンスなどを英米人に頼る傾向があります。これは日本人にその能力がないからではなく、英語は「外国語」というイメージにとらわれているからではないでしょうか。フランスの空港でフランスふうの英語を聞くと「フランスに来た」という感じがします。私たちは日本人が英語を使うことの価値をもっと認めたいものです。英語は「国際言語」なのだから「外国の人のことば」ではなく、私たちのことばでもあるのです。私たちは英語をもっといろいろな場面で使い、私たちのことを世界の人びとにどんどん伝えていく努力をすべきでしょう。

なんのための英語学習?

 さて、どんな仕事にも役立つ道具であり、自分の可能性をひろげてくれるもうひとつのことばである英語の実用性や有効性を私たちは理解しているでしょうか。また英語を学ぶ子どもたちに、英語を学ぶ意義をしっかり伝えているでしょうか。
 コラム1の調査報告のように、日本では、教員も子どもも依然として、英語は外国で使う特別なことばであると思っているようなのです。そのことは英語の可能性や英語学習の目標を小さくしているといえるでしょう。
 また、英語を学ぶ目的は、英語を使うことにあります。英語を使って自分の趣味や仕事についての世界を広げられれば、こんなにすばらしいことはありません。ところが、私たちは英語の勉強で、勉強そのものを目的にしてしまい、英語を使うという本来の目的を忘れがちです。受験勉強で精根尽きてしまうのか、大学生になっても積極的に英語を使おうとしない学生は少なくありません。それはとてももったいないことですね。

つづく

おはなしをうかがった方
本名信行先生
本名信行先生(ほんな・のぶゆき)
1940年生まれ。
青山学院大学国際政治経済学部教授を経て、現在同大学名誉教授。
青山学院大学大学院修士課程修了。
国際異文化間コミュニケーション研究学会(IAICS)会長。(2007-2009)
日本「アジア英語」学会会長(1997−2009)。
ラボ言語教育総合研究所研究員。
研究分野は、多文化言語としての英語、異文化間リテラシー、言語意識論など。 世界各国の路地裏から行政機関の文化社会政策まで広く深く英語事情に精通。主な著書に『世界の英語を歩く』(集英社新書)、『英語はアジアを結ぶ』(玉川大学出版部)などがある。
 文部科学省の中央教育審議会初等中等教育分科会の外国語専門部会委員もつとめる。(2003-2010)
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