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特集連載
第38回
言葉も音楽と同じように存在することが,もっとも自然。

2014/7/1

蔵野蘭子/くらの らんこ

 蔵野蘭子/くらの らんこ
声楽家(ソプラノ)

 声楽家として国内外で活躍されている蔵野蘭子さん。現在はASWARAマレーシア国立芸術大学で声楽を教えていらっしゃいます。東京芸術大学大学院卒業後,ご自分の活躍の場を国内に留まらず,海外にも広げていかれたエネルギーはどこから生まれたのでしょうか? ラボ・パーティで学ばれたさまざまなことが,「音楽」を表現する現在のお仕事に生かされているそうです。音楽を通してご自分の領域をもっと広めていきたい,という蔵野蘭子さんの寄稿をぜひお読みください。

声楽家としての最近の生活

 私は声楽家として,オペラやコンサートに出演しています。特にドイツのワーグナー作品と,フランス音楽が近年の専門分野です。今年7月には,サントリーホールにて往年のワーグナー大歌手と共演のコンサートに出演します。また,ラボランドのある長野県ではフランス音楽と俳句をテーマにした演奏会があり,久しぶりに長野に行くのを楽しみにしています。
 現在は,マレーシアの国立芸術大学で,声楽の指導をしています。大学院生時代,ふと立ち寄ったマレーシアとそこに住む人達が大好きになり,いつかこの国の人達と音楽がしたいという夢が現実となり,つい先日はこの学校で初の試みとなったオペラ公演を実現しました。

マレーシアとの出会い

 マレーシアを訪れ,いつかこの国で音楽をしたいと思うようになってから,何とかマレーシアの音楽家と知り合えないかと,知り合いの知り合い・・・というように手を尽くし,当時まだ若手だった作曲家・ラザと出会ったのが今思えば,すべての始まりです。
 その後,ラザの作品が日本のプロオーケストラで演奏される機会があったり,彼の教える学生が合唱の演奏会のために来日した際に,私の母がラボ関係者や親戚に声をかけホストファミリーを見つけたり,かれこれ20年以上の交流が続きました。
 数年前,私が再びマレーシアを訪れるようになったとき,ラザのアレンジでペナンの大学の客員教授として声楽の指導をしたり,その他にもご縁が広がり,演奏会を催したりするようになりました。そのような積み重ねの後,彼の推薦でいまの大学で教えることになりました。

たいせつにしたいラボの思い出

 多くの大切な思い出がラボと共につくられました。小学1年生で,初めて黒姫サマーキャンプに参加した時,火山灰性の土で,手足が真っ黒になったのを覚えています。ピカピカの溶岩石は,今でも家のどこかにあるはずです。長時間のハイキングでは喉がカラカラになり,通りがかりのお宅でいただいたお水のおいしかったこと! 中学3年生の時には,体力不足の受験生であったものの,シニアメイト(キャンプリーダー)のお兄さんに支えられ無事,黒姫山登頂を果たしました。その後,今度はシニアメイトとして,ラボっ子を励ましながら再登頂することもできました。
 母が,“I want ….. ”というセンテンスだけは覚えておきなさいと,たくさんの手作り日本人形のしおりと共に送り出してくれた,中学1年生でのラボ国際交流(アメリカでのホームステイ)。従妹がみんな集合場所である代々木のオリンピックセンターまで見送りに来てくれました。成田空港がちょうど開港して間もない頃のことです。大学2年生で参加したラボ中国交流では,オペラ『トゥーランドット』と『蝶々夫人』のアリアを歌い,それはその後,私の重要なレパートリーになりました。大学時代,カレッジメイトとして,アメリカから来日した4H(青少年交流団体)のメンバーのお迎えを任された時には,空港で一人前のガイドになった気分でした。
 ラボ教育が多岐に渡っているため,ラボっ子たちは皆がどこかで本領発揮の機会を得,自信を持ち,目を輝かせています。縦長の人間関係の中で,最初は年長者に憧れ,お世話になり,成長し,そして次は自分がリーダーとしてみんなをまとめていく。メンバー各々の能力を導き出し,まとめるのがリーダーの役目ということにもラボの活動を通じて気が付きました。そしてみんなが喜んでいると自分もうれしいなあと,エンターテイナーになる喜びを知ったのは,ラボキャンプでシニアメイトをした時だったかもしれません。

夢中になれる仕事,そして人との出会いのすばらしさ

 ラボで培ったことは,言語を媒体に,しかし言語のみに頼るのではない,人間同士の交流です。ある音楽を知っているというのは,たいがいその音楽に触れたことがあるー聴いたことがあるということ。楽譜を見ただけで音にもせずに,その曲を知っていると言う人はごくまれでしょう。言葉も音楽と同じように存在することが,もっとも自然であると思います。
 音楽家という職業を持っているわけですが,あまり仕事をしていると思ったことがありません。自分のしている事に夢中になっているのです。ラボも,勉強させられているという感じのない中で,いろいろ学ばせてくれたのでしょう。 ラボ教育があらゆる場面で非常に自然体であったため,何を学び,現在にどう影響しているかを書こうとすると非常に難しいのです。それは,私が成長していく中で自然に浸透し,何かを無理やり捻じ曲げて進めるような事のない生き方に導いてくれたように思います。
 ラボのテーマ活動,身体表現からは,発想を豊かに,何もない所からでも何かを生み出す楽しさを学びました。自由に発想し,表現する喜び!ラボの中で自然に習得した事は,確実に今私の携わる舞台芸術の分野で生かされていると思います。
 人との出会いの素晴らしさ,新しい発見をする楽しさ,そしてそれらが展開していく喜びもラボ活動の中で培ったものでしょう。妹が中学1年生でホームステイしたファミリーとは,家族ぐるみで訪問を重ね,昨年私のCDリリースの際には,リーフレットの英語翻訳をお任せしました。クレタ島で『蝶々夫人』を歌った時には,はるばるアメリカから飛んで来てもくれました。そして,昨年は妹のホストの子どもの所へ母が主宰するパーティのラボっ子がホームステイへ,とつながっていきました。
 ヨーロッパでの生活では,クラッシック音楽を知るためにもオペラの生まれた国の人たちと共に暮らしてみようと思い,イタリア人の同年代のデザイナーとアパートをシェアしました。そしてここマレーシアでは,学生たちと恋の悩み相談などで話が盛り上がります。まるでラボキャンプの夜,みんなで遅くまでいろいろおしゃべりしたのと同じです。
 あるキャンプの最後の日,ラボランドを去りがたく,自然と共に生きることを少し身に付けた気分になり,「自然と共に生きられる人はすごい!都会にいる人は軟弱」,と思いがちになっていた私たちに事務局の方が,「都会で生きるのはもっと厳しいものだ」と,語ってくれました。いま私の本業は,そんな都会にオアシスを提供することです。そして,その事務局員は「ラボの世界だけに留まるのではなく,他の世界で学び,ラボと融合させてこそ何かが発展する」とも。一つの世界に浸ったままではなく,一つの専門を向上させるためにも大海を渡ってみる,そのことのたいせつさに気付かせてくれました。舞台では,演者の日常が大きく反映されていると痛感します。

現在のラボっ子へのメッセージ

 私はいつもなんて運がいいんだろうと思います。その素敵な運を運んでくれた人達に私が直接お返しをできなかったとしても,その出来事のおかげで,私も誰かに素敵なお返しをしたい気持ちになり,誰かがそれを受け取ってくれる。そしてその人がまた次の誰かにリレーしていく。そんな素敵なバトンタッチの仕方は,ラボが教えてくれたように思います。
 たとえどうしてもやらなければならないことだとしても,それをやりたいことに変えてしまえば,なんでも楽しくなるでしょう。そして,やれるだけのことをしたと自分自身が思えることが何よりだと思っています。

おはなしをうかがった方
蔵野蘭子
蔵野蘭子(くらの らんこ)
 東京芸術大学,同大学院オペラ科修了。二期会及び,文化庁オペラ研修所修了。文化庁芸術家在外研修員として渡伊。その後,ベルギー音楽アカデミー(首席,ウックル市賞を受賞)。メトロポリタン歌劇場での研修。ベルギー・ブリュッセル王立音楽院マスター修了。France3(TV)よりグランプリ受賞,トゥルーズ及びマルモンド国際声楽コンクール,日本音楽コンクール入賞。国際ワーグナー歌唱コンクール日本大会優勝。同ヨーロッパ大会にて特別賞受賞。
 15年間の欧州滞在では,ハノーファー万博,ベルギー王立歌劇場,ストラスブール歌劇場,ニース歌劇場,クレタ島音楽祭でのオペラ公演,ブリュッセル及びプラハでの『第九』ソロ,南仏トゥルーズ,ボルドー,英国ロンドン,ワーグナーの聖地バイロイトでのソロ・リサイタルなどに出演。
 日本では,N響定期 ,NHK-FMリサイタル,二期会,日生劇場,いずれも新聞各紙で高評。新国立劇場 ワーグナー「ニーベルングの指環」シリーズに出演の際は,英国の演出家キース・ウォーナーから,“私の知り得る中で最も魅力的なジークリンデ”と賞賛を受け,ワーグナーファンや,新聞評論でも印象に残る歌手として高く評価されている。近年は,プーランク・モノオペラ『人の声』,ハノイでの遷都千年記念『マーラー千人の交響曲』ソプラノソロ。またマレーシア,インドネシアに大学客員教授として招かれ,教授活動と共に,世界遺産記念フェスティバル,津波チャリティーコンサート,TV出演などで歌を通した国際理解にも貢献している。
 昨年末,CD『ワーグナーアルバム』をリリース。『マーラー : 交響曲第 4 番』『マーラー : 交響曲第2番- 復活-』のCDでは,ソプラノソロを担当。 二期会会員。
 (元,東京支部 蔵野パーティ 所属)
 ※今秋には,ラボの東京中央地区主催の留学生交流イベントに,マレーシアの音楽家と共に参加予定。
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