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特集連載
第36回
ラボでの経験を活かして、途上国との橋渡し、
被災地の支援をしていきたい

2014/5/1

高津玉枝/たかつ たまえ

 高津玉枝/たかつ たまえ
(株式会社福市 代表取締役)

 フェアトレードの会社を設立し、途上国との橋渡しの活動を推進している高津玉枝さん。東日本大震災の被災者支援プロジェクトEAST LOOPを立ち上げ、被災地の人々が働くことで人とつながり、収入も確保できるような活動を地道に続けています。
 そんな高津さんが、困難に直面したときに思い出し、支えにしているのは、高校時代のラボ・キャンプでのシニアメイト(キャンプ・リーダー)の体験なのだそうです。

フェアトレードの仕事を支える、
「外国の知らない人とでもすぐに仲良くなれる力」

 「フェアトレード」ということばをご存知でしょうか? 途上国の弱い立場にある人たちと公正な貿易をしてサポートしていく仕組みのことです。私は大学を卒業し、会社勤務を経て、マーケティングの会社を興しました。仕事を続けるなか、安いものばかりが売られることに疑問を感じたときにフェアトレードという概念に出会い、2006年に会社を設立しました。始めたばかりのときは、ほとんどの人が知らない状態でしたが、最近はセンター試験の問題にも出たりして少しずつ認知度があがってきました。そんな追い風もあって、2012年に阪急百貨店のうめだ本店にフェアトレードのセレクトショップ「Love&sense」を出店しました。
 扱っている商品はブラジル・コロンビア・ベトナム・カンボジア・ブルキナファソ等から仕入れたバッグやスカーフ、アクセサリーなどの服飾雑貨が中心です。「途上国に知り合いがいるのですか?」「どうやって取引をはじめたのですか?」とよく聞かれますが、最初から知り合いなどいません。でも大丈夫なのです。私には外国人であっても、知らない人とすぐに仲良くなれる力がありますから。

毎日泳ぎ、友だちをたくさんつくり、真っ黒に日焼けしたラボ国際交流

 母親がラボ・テューターをはじめたのと同時に、小学校4年生からラボに入会し、中学1年のとき(1973年)に、ラボ国際交流でアメリカにホームステイに行きました。水泳が好きだったので、ステイ先の希望にそう書いたからでしょうか、ホストファミリーは水泳一家でした。朝からプールへ、戻って朝食、少し休んでから午後にも練習、そして夜にも友人の家のプールに泳ぎに連れていかれました。ほとんど毎日、洋服の代わりに水着を着て過ごしていました。「eatって食べるっていう意味なんだ」とアメリカで覚えたぐらいですから英語は、ほとんど理解できていなかったと思います。そんな日々でしたが、最後には地域の水泳大会にも出場させてもらい、友だちをたくさん作って、真っ黒に日焼けして帰国しました。大学4年の時、再びホストファミリーを訪ねた時に、お母さんから「あなたは、口のきけない子だと思っていたのよ」と言われ、唖然としましたが。
 でも、この経験があるから、私は海外に行くことにほとんど抵抗がありませんし、初めての人たちと(たとえ言葉が通じなくても)友だちになることができるのだと思います。

東北支援プロジェクトEAST LOOPを設立

 仕事をしているといろんなことが起こります。3月11日に東日本大震災が起こった時は、まさにフェアトレードに取り組もうと思っていた矢先でした。私は阪神淡路大震災で被災した経験があったので、しばらく精神的にも不安定な状態でした。なんとか平常心が戻った時に、被災地のために何かできないかと考え、フェアトレードのように被災した人たちに商品を作ってもらって、それを販売することで収入につなげ、元気を届けたい、そんなプロジェクトを立ち上げようと決めました。4月にさっそく被災地に入り、取り組みを説明したところ「君は、被災者に仕事をさせようというのか!」とけんもほろろに断られました。まだ時期が早かったのです。
 それでもあきらめずにもう一度5月に被災地を訪れたところ、たった一か月で状況が激変し「被災者に何かさせないと、二次被害がおこってしまう。一緒にやりましょう」と思いがけず話が進みました。どんな商品を作るのか、寄付ではなく商品として購入してもらうために何を訴求したらよいのか。実績も何もないところからのスタートでしたが、たくさんの人の力を借りて、東北支援プロジェクトEAST LOOPは誕生しました。二つのハートが寄り添う形のデザインのブローチには、台紙の裏に作った人の場所と名前が書いてあります。フェイスブックなどを通じて、被災した人たちにメッセージを送ることができるようにしました。
 プロジェクトが進みはじめると難題ばかりでした。フランス製の材料が品切れ、手芸店を回って糸を買い漁ったり、商品の仕上がりが悪く何度も作り直してもらったり、納品数量を間違ってお客様に謝ったり、ある時は生産過多で、在庫の山になったり。

困難に直面したとき、思い出すのはラボ・キャンプの体験

 そんな時に思い出すのは、ラボ・キャンプでした。黒姫や高梁(たかはし)、産山(うぶやま)でシニアメイト(キャンプ・リーダー)をさせてもらったことは、私にとって貴重な経験でした。どんなに準備をしていても、事件やトラブルは毎日いくつも起こりました。小さな子がホームシックで泣き出したり、キャンプファイヤーが雨で中止になって別のイベントを急きょ組み立てたり。ラボ・キャンプにはマニュアルがないので、自分たちで考えてすべてを解決し、参加したラボっ子たちに、思い切り楽しんでもらう場を提供しなければいけないのです。トラブルのたびに、悩んだり落ち込んだりしていましたが、最後には悩んでいても仕方がない、状況が変わったのだから柔軟に考えて、最善の策で運営しよう、その場にいたシニアメイト全員がそんな雰囲気で、トラブルがあればあるほど燃えて、楽しんでいたような気がします。
 そのスピリッツが植えつけられていたからでしょうか、EAST LOOPのプロジェクトは結果的に、被災地に3000万円以上の収入をもたらしました。「○○さんのブローチ買いました。とっても丁寧な仕事ですね」直接届くメッセージは、生きる力につながったと作り手さんが語ってくれました。経済産業省のソーシャルビジネスケースブック(震災編)にも取り上げられ、注目を集めました。

ラボでの貴重な経験を活かして、今後も途上国との橋渡し、
被災地の支援をしていきたい

 最近大学からお招きを受けて、仕事について講演する機会があります。学生からは「どの資格を取ったらそんな仕事ができますか?」「何を勉強したらよいのですか?」など質問されます。知識だけ(主にネットを通じて)に頼っている学生が増えているように感じます。そんな時は、「考えるより、調べるより動いてみようよ。そうしたらわかることもあるし、自分で経験しないと身につかないと思うよ」と返答しています。
 語学力を伸ばすのであれば、中学一年のホームスティは効率的ではないかもしれません。でも、わずかなことばしか知らなくて、たったひとり海外で過ごした経験は、私と外国の距離を一気に近くしてくれました。マニュアルで整えられたキャンプであれば画一的で統制のとれたものになるかもしれませんが、自らが考え実行するという経験を得て、トラブルを楽しむスピリッツを身につけることはできなかったかもしれません。私はラボでの貴重な経験を活かして、今後も途上国との橋渡しのためにフェアトレードを推進し、東北の被災地のために取り組んでいきたいと思っています。

おはなしをうかがった方
高津玉枝
高津玉枝 (たかつ たまえ)
小学校4年のときにラボ・パーティに入会。1973年、中学1年でラボ国際交流に参加し、アメリカに1か月ホームステイ。高校時代は黒姫、高梁(たかはし)、産山(うぶやま)などでラボ・キャンプにシニアメイト(キャンプ・リーダー)として参画。

大学卒業後、富士ゼロックスに営業職として入社。その後雑貨商社に転職。
91年にインテリア・家庭用品・文具など雑貨を中心とした売り場をプロデュースする会社を設立。百貨店や小売業、企業の業態開発などを行う。95年よりPR事業も手掛け掲載媒体は3500誌以上。

90年代後半、安いものばかり消費されることに疑問を感たときに、フェアトレードの概念に出会う。インドのフェアトレード団体を訪問したときに、国際NGOオックスファムの商品にであう。日本でのオックスファムの設立を願い、活動を開始、03年にオックスファムジャパン設立。12年まで理事を務める。

06年にフェアトレードを中心とした事業を行う株式会社福市を設立。08年フェアトレードのセレクトショップLove&senseを表参道ヒルズで立ち上げ、その後高島屋・伊勢丹・三越などの商業施設でイベント出店。

10年 20年続いたマーケティングの会社を解散。

3.11の東日本大震災後にフェアトレードの考えをベースに、手仕事で東北を支援するプロジェクト「EAST LOOP」を立ち上げる。現在作り手200人(登録ベース)1500万円以上の収入を生み出し届けた。経済産業省のソーシャルビジネスケースブックにも取り上げられる。

EAST LOOPのノウハウを被災地に移転する事業が、経済産業省の補助事業として認められ12、13年度に実施。

株式会社福市 代表取締役
一般社団法人 フェアトレードタウンジャパン  監事

http://www.facebook.com/LOVEandSENSE
http://www.love-sense.jp/
http://www.facebook.com/EASTLOOP
http://www.east-loop.jp/
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