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特集連載
第33回
 ラボ・パーティで育つ
「これからの社会で求められる力:社会力」

2014/2/1

門脇厚司/かどわきあつし

 門脇厚司/かどわきあつし
(筑波大学名誉教授,ラボ言語教育総合研究所代表)

 今月の特集連載は,子どもと若者の居場所づくりに情熱を注ぐ教育社会学者,門脇厚司氏です。門脇氏は『子どもの社会力』,『社会力を育てる』(ともに岩波新書)などの著書で,「社会力」ということば・考え方を世に広められました。門脇氏は,これからの社会で必要な力として「人と人がつながり,社会をつくる力」をあげ,これを「社会力」と名付け,その重要性を提唱されています。
 門脇氏は,「社会力を育てることが,他者への関心を高め,他者への理解を深め,他者との相互行為を巧みにし,人びとの関係を良くし広げることになる。そして,自分に対する自信につながる。さらに身近な他者や人間社会全般への関心,それについて考察する力や想像力,ひいては知的好奇心と学ぶ意欲が向上する」と分析されています。
 それでは,「社会力」を育てるにはどのような場が必要なのでしょうか。門脇氏は,ラボ・パーティのなかに「社会力」を育てる環境・条件があると言われます。

これからの社会でもっとも必要とされる能力「社会力」

 私がラボ・パーティを知ったのは、岩波新書の一冊として『子どもの社会力』という本を出版して半年くらい経ってからのことでした(2000年の夏)。ラボ教育センター発行の『おかあさんへのてがみ』に載せるインタビュー記事に協力したのが最初でした。その後、いろいろなかたちでかかわりをもってきましたが、ラボ・パーティがやっている教育を深く知るようになるにつれ、その内容が、子どもの人間形成にとっていかに大事なことであり、価値のあることかがわかってきました。
 ラボ・テューターのもとに集まった乳幼児から大学生までのラボっ子(ラボ・パーティの会員)たちがともに、英語と日本語で収録されたラボ・ライブラリー(テキストとCD)を使って、テーマ活動という演劇をみんないっしょになってやる、ということを長くやり続けることで、英語や日本語に強くなるだけでなく、私が言い続けてきた「社会力(Social Competence)という、これからの社会でもっとも必要とされる能力を、ごく自然に、しかもしっかりと身につけていることがわかってきたのです。

PISA型の学力とは

 ラボ・パーティとおつき合いをするようになってほぼ15年、私は2冊めの岩波新書を書くように勧められ(『社会力を育てる』として刊行)、その本を書くためにあることを調べることになりました。あることというのは、OECD(経済協力開発機構)が2000年から始めた「学習到達度調査」(略して「PISA」)といわれています)テストで調べようとした「学力」がどんな力なのかということです。調べてみると、OECDが調べようとした学力(「PISA型の学力」といわれています)は「コンピテンシー(Competency)」というもので、学校で教わった知識をただ暗記しているだけでなく、社会にでてから、他の人たちと協力しながら、困難な問題を解決するとか、理想を実現するとか、学んだ知識をさまざまなことに応用できる力のことであることがわかりました。地球の温暖化とか、食糧不足や資源不足、あるいは世界各地での紛争だとか、人類社会は、いま、解決困難な多くの問題をかかえています。そこで、OECDが考えた末にたどり着いたのが、これからの社会をささえていく子どもたちに必要な力はコンピテンシーで、これこそ、子どもたち一人ひとりが幸せになるためにまた、社会がこれからも永続的に発展していくためにも欠かせない力だということでした。

わが子が社会で活躍し、幸せな生涯を送るために

 よく考えてみると、PISA型の学力とは、何のことはない、私が言ってきた「人が人とつながり社会をつくる力」としての社会力と同じことだったのです。そして、他の人といい関係をつくり仲良く活動することができる能力や、誰とでもコミュニケーションできる力、そして何事にも臆せず前向きに取りくむ態度などは、ラボっ子たちがラボ・パーティに参加し、テューターや他のラボっ子たちと活動を共にすることで培い育てていた能力でもあったのです。
 わが子が社会で活躍し幸せな生涯を送るよう望む親御さんたちには、お子さんをラボ・パーティに参加させ、外国の人たちを含め、多くの人たちと交流する機会を増やすようお勧めします。

おはなしをうかがった方
門脇厚司
門脇厚司(かどわきあつし)
筑波大学名誉教授。ラボ言語教育総合研究所代表。公益財団法人ラボ国際交流センター理事。専門は教育社会学。1940年生まれ。東京教育大学大学院教育学研究科博士課程修了。東京教育大学助教授,筑波大学教授,同人間学類長,同教育学系長,筑波学院大学学長,日本教育社会学会会長などを歴任。日本の若者や子どもの人間形成過程に関する研究を行なうかたわら,学校づくり,遊び場づくり,地域づくりなどにも積極的に参画。現在,茨城県美浦村教育長として,社会力を育む教育と地域づくりを実践している。主な著書に『子どもの社会力』,『社会力を育てる』(ともに岩波新書),『学校の社会力』,『親と子の社会力』(ともに朝日選書)等。共著に『大人になったピーター・パン−言語力と社会力』(アートデイズ)等。
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