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特集連載
第9回
「原始の子ども」が輝くとき(その2)

2011/6/20

絵本「かさじぞう」は墨絵に彩色をほどこして完成

 …昨年冬に刊行されたラボ・ライブラリー絵本,Get on Target Series 23 『ジョン万次郎物語』には,『かさじぞう』と『ももたろう』が収録されています。この絵本の絵を担当された本多豊國さんは,これまでもライブラリー絵本『なよたけのかぐやひめ』などの絵を担当していただいていますが,今回の絵本も,当初からやる気満々で取りくんでいただきました。
 本多さんはもともと油絵を描かれていましたが,墨絵の魅力に目覚めてからは,ずっと墨絵を中心に作品を制作されています。墨絵は伝統文化の香り高い世界ですが,いずれはその高みに登るにしても,最初はもっと楽に自由に墨絵を楽しんでもいいのではないか,そうすればもっと墨絵は先進性を発揮し,その可能性を広げるに違いないと本多さんはおっしゃいます。

墨絵の心を世界に

「アジアン」は本多さんのテーマ  ぼくの仕事は墨絵を描くことと,世界中の人びとに墨絵の心(活力や楽しさ)を伝えることです。墨絵では自然のなかに心をみいだし,それを表現します。また,鳥獣戯画が典型的ですが,絵巻物などに描かれた墨絵は,影がなく,デフォルメがあり,輪郭線を描いて着色をするという手法が用いられています。絵巻物を解いていけば物語が進行する。少しずつ形を変えて連続的に繰っていけばアニメーションになる。いま世界に冠たるマンガ・アニメもそのルーツは墨絵にあると思っています。同じように,墨絵という伝統的な芸術が,これから世界中の人びとに楽しんでもらうようになるためには,現代性と世界性がなくてはなりません。

「USA 50」全米をまわってアメリカを描く、「墨絵ライブ」はダイナミックに  アジアのやさしい心と自然の「物語」を描きたいと願って「アジアン・シリーズ」を描き続けています。また,墨絵の心をもって,日本・アジアから世界を広げて描いていきたいと思い,アメリカ50州を描く「USA50」の旅を続けています。いま,10年間をかけて12州を巡りました。西から東へ,やっとロッキー山脈を越えたところです。たくさんの出会い,交流を深めながらスケッチの旅を続けています。
 墨絵の心を伝え,その魅力を知ってもらうために,「墨絵ライブ」というパフォーマンスも続けています。大勢の人びとの前で,大画面に即興で墨絵を描くというもので,これまでにアメリカで10か所,日本で20か所以上で催しました。シアトルでの講演のとき,キングサイズのシーツに描いたのが始まりでした。講演やワークショップも行なっていて,墨絵の楽しさを味わってもらっています。ぼくのホームページでも墨絵の魅力を楽しんでください。
■本多豊國 公式サイト  http://www.nekomachi.com/

絵本が大好き

 もうひとつ,ぼくにはたいせつな仕事があります。それは「絵本」です。ぼくは子どもの頃から絵本が大好きで,いつか自分でも絵本を描いてみたいとずっと思っていました。いまでも絵本を見ると幸せな気分になります。ヤーノシュ『おばけリンゴ』,センダック『かいじゅうたちのいるところ』,そしてなによりも好きな,オルセン『キオスクおばさんのひみつ』。もっともっとたくさんの絵本がいまもぼくを楽しませ,励まし,夢の力を与えてくれます。そうして,ぼくはこれまでに約20冊の絵本を出版し,フランスやイタリア,スロヴァキアやユーゴスラヴィアでグランプリをとったり,入選したりしました。『なよたけのかぐやひめ』はブラチスラヴァ国際絵本原画展での特別招待個展で展示されたこともあります。ラボからは『なよたけのかぐやひめ』と『チピヤクカムイ』,それから『鮫どんとキジムナー』の絵を依頼され,提供してきました。そして昨冬刊行されたラボ・ライブラリーには,『ももたろう』と『かさじぞう』を描きました。

『かさじぞう』と『ももたろう』を描く

ラボ・ライブラリー「かさじぞう」「ももたろう」  『かさじぞう』は墨彩画ですが,ぼくのお気に入りの作品のひとつになりました。だいたいぼくは,元気でにぎやかな作品が多いのですが,この物語はとても静かなお話です。ぼくにはこの「静かさ」をだすのがひと苦労なのです。でも,今回は大成功しているのではないかと思っています。

 また,『ももたろう』は木版刷りに彩色をして制作しました。見てもらえればわかりますが,着物の中や山の中などに,隠し絵のようにいろいろなものを描き込んでいます。どんどん細かく彫り込んでいるうちに,約6か月もかかってしまいました。その間,両手とも彫刻刀がケガをしたり,板を押さえたり,彫刻刀で同じところを酷使したりするので,マメだのタコだのがたくさんできました。とくに板を押さえていた左手の小指のマメは,いまも治っていません。小さくプクっと膨れているマメを見るたびに,この中に「ももたろう」がいるんだなと思って,笑ってしまいます。桃から生まれたももたろうが,いまはぼくの小指の中にいる。そして力を与えてくれている。うれしくて楽しくなります。ラボの絵本にのって,みなさんの所へ行っている。もっとうれしくなります。
 これからもどんどんいい絵本をつくっていきます。お楽しみに。


「ガンバル日本プロジェクト」について

「ガンバル日本」(Gambaru Japan)プロジェクトは東日本大震災に対する支援を目的とした活動です。

 私たちにできることは多くはありません。しかし小さいからといって何もしないのではなく行動することがだいじだと思います。準備に時間がかかってしまいましたが「ガンバル日本」のプロジェクトを立ち上げ,被災者の方たちへの支援を,できることをやっていきます。さまざまな著作物の販売の収益金の寄付や,子どもたちの目の前で絵本を完成させていくイベント「ライブ絵本」を,被災地で行なったりしていきます。子どもたちに笑顔が戻るまでやり続けるなどとはいえません。ほんの一瞬の微笑みのために,私たちは活動していくことが精一杯です。しかし私たちはできる限りやり続けていきます。その先がもしも明るい未来になるのであれば,と考え私たちは「ガンバル日本」というプログラムを実行していきます。つきましては皆様のご支援を賜りたくお願い申しあげます。

「ガンバル日本」のプロジェクトを支援していただける方がおりましたら,ぜひ私たちにご連絡をください。皆様のご協力をお待ちしております。  詳細はホームページでご紹介しておりますのでどうぞご覧ください。

http://www.nekomachi.com/GambaruJapan/
ガンバル日本プロジェクト


おはなしをうかがった方
本多 豊國先生
本多 豊國先生(ほんだ・とよくに)
1945年東京生まれ。幼少の頃より虫と絵を描くことが大好きだった。将来なりたかったのは絵描きがファーブルのような昆虫学者。 1964年より本格的に絵画活動を開始。1987年イタリア・ボローニャ国際絵本原画ビエンナーレ入選を皮切りに次つぎと欧州で絵本の賞を受賞。1990年にはフランス・ラニオン国際絵本原画ビエンナーレでグランプリ・イカロス賞を受賞。翌年ブラチスラヴァで異例の特別展示を行なうなど国賓級の待遇を受ける。その後作品が欧州各国を巡回展示される。1999年京都府の禅定寺に高さ45メートルの巨大壁画を完成させる。2000年,アメリカを描く「USA 50」のプロジェクトを開始。作品展示や墨絵ライブなどで墨絵の普及を図る。 2011年東日本大震災に衝撃を受け,独自に支援プロジェクト「ガンバル日本」(Gambaru Japan)を立ちあげる。いままで培った世界中のネットワークを駆使し,現在,被災地を支援するプロジェクトを進行中。
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