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0705
SAYO & GANO トーク=<6>


〔小さい命、弱い命、限られた命〕



◎6-1 小さくても、弱くても、かけがえのない命

◆限られた命
― ユウくんがね、セミをいっぱい、いっぱいとっていました。
― 元気な昆虫少年だからね、ユウくんは。夏休みはまさにユウくんの季節だ。
― そんなことを言っていていいのでしょうか。セミたちが可哀相じゃありませんか。万智子先生もおっしゃっていたし、おとうさんもよく言うでしょ、限りある命だ、命あるものはどんな小さいものでも大事にしなければならない、と。
― それはそうだね、どんな命も限りある命、かけがえのない命。ニニギノミコトが木の花サクヤヒメだけをお嫁にして、お姉さんのイワナガヒメをいっしょにお嫁にもらわなかったことから、永遠の生命はこの世界から失われた。
― ユウくんのとるセミはともかくとして、小夜も早百合ちゃんも、おとうさんおかあさんも、みんなみんな動物のお肉を食べているし、お野菜だって命ある生きものですよ。ユウくんのこと、悪い子なんて言えません。みんなみんな悪い子じゃないですか。
― さあて、困りましたね、他の生きものの命を奪わないと生きていけない人間。ほんと、罪深い生きものだ。肉をたべないベジタリアンもいるにはいるけれど。
― 動物の肉はだめだけれど、植物である野菜や山菜ならいい、というのも、理屈に合わないのではありませんか。
― 植物もおなじ生命体だからね。でも、そんなことを言っていたら、人間はどうやって生きていったらいいの? 小夜ちゃんの好きなカレーライスもハンバーグも「なし!」の毎日って、楽しいだろうか。
― 牛肉も豚肉も鶏肉も、小夜たちがふだん見るのは、お店でトレイに入ってきれいに包装され陳列されたもの。あれが畜舎にいた牛や豚と同じだという実感には遠いです。しかし、その欺瞞のおかげで、抵抗なく食べられるんでしょうか。このあいだも早百合ちゃんと「こどもの国」に行って、牧場でポニーやヤギやヒツジやウサギといっしょに遊びました。仲良しになったあのかわいいお友だちのお肉だ、と知ったら、とても食べられません。

◆食物連鎖とエコロジー
― 食べたり食べられたり、…可哀想だけれど、それが自然界の摂理だ、と考えるしかないよね。「食物連鎖」ということばを聞いたことはありませんか。
― お勉強しましたよ。木や草の葉や実を昆虫たちや野ウサギなどの草食動物が食べる。それを小型の肉食動物が食べる。その小さい動物を大型の肉食動物が食べる…。
― ほかにも森のなかでは、台風や落雷で倒れた大木が、何年かすると、バクテリアや菌類に食べられて腐食し、土のような有機堆積物に化して姿を消しています。その上に新しい命のヒコバエが生えていることもある。森のなかで死んだ動物たちも同じで、微生物のエサになって跡形なく消えてしまいますね。死んで他の生きものを養っている。
― よくできていますね、森のエコシステムって。
― 森だけではありませんよ。海でも、川でも、そのエコシステムははたらいています。アフリカのサバンナにすむ動物たちのこと、テレビで見ましたね。怖いような生存競争の現実がありました。うん、会社のなかだって同じさ、食うか食われるか…。動物でも植物でも、あらゆる生物種のあいだでこのシステムが働いて自然界のバランスがうまく保たれ、それによって地球上の生物の多様性が守られている。だから、小夜ちゃんは、罪の意識をもつ必要はなく、いっぱいおいしいものを食べて大きくなっていいのさ。
― でも、やっぱり、お肉を食べることには、どうしても心にひっかかるものが残ります。

◆肉食の迷論理
― 長野に諏訪大社という大きなお宮があります。ここに有名な「諏訪の勘文」というものが残っていて、肉食の理由をこんなふうに語っています。「日本一社鹿食箸」と題する意見書ですけど、テイのいい言い訳だね。おもしろいよ。おとうさんが現代語に直して言ってみるとね、「野獣鳥魚の類は、その業(ごう)が尽きたからこそ、人間に捕えられるのである。したがって、そうしたものたちに一時の情けをかけて放してやったところで、もはや長くは生きられない。それに、そうして野垂れ死んでしまっては、成仏も叶わない。だから、いっそのこと人間に食べられてその人間と同化し、その人間が成仏することでいっしょに自分も成仏できれば、そのほうが結果的には、野獣鳥魚のためである。だから、獲るものを恨むでないぞ」
― ま~、あきれた! 業が尽きた、ですって! 野垂れ死んだら成仏できないから、ですって! 手前よがりのひどいコジツケじゃないですか。わけても、神職にある人がそんなこと言うなんて、めちゃくちゃですよ、バチがあたりますよ。
― 小夜ちゃんみたいにカッカと怒ったかどうかは知りませんが、人が動物の肉を食べるのは同じ生きもの同士としてどうかな…? と考える人は、古来、たくさんいました。天武天皇といったら、「古事記」「日本書紀」の編纂を命令したことで、小夜ちゃんも知っているね。壬申の乱(672年)で大友皇子を破って天皇に即位した人。即位して4年後に、この天皇が肉食禁止令を全国に向けて発布しています。
― どんな内容の勅令なのですか。
― 今後、漁撈や狩猟に従事する者は、檻(おり)や落とし穴をつくったり、仕掛け槍などを設置してはならぬ。4月1日以降9月30日までのあいだは、隙間の狭い簗(やな)を設けて稚魚を獲ってはならぬ。また、牛、馬、犬、猿、鶏の肉を食べてはならぬ。それ以外は禁制のかぎりではないが、もし禁制を犯した場合は、きびしく罰する…。そういうものでした。
― 4月1日から9月30日、というのは、どういうことですか。
― これは稲作の時期ですね。魚を獲ったり獣を獲ったりなんぞしていないで、ちゃんとお米づくりに励め、ひたすら励め、それさえしていればいい、ということでしょうか。

◆為政者と庶民の食い意地くらべ
― そんな命令が出て、庶民はみんなおとなしく従ったのでしょうか。
― どういたしまして! なにしろ、それで暮らしを立てていた人も少なくなかったでしょうから。禁を犯して獣を狩り、その皮を剥いで収入を得て暮らすような人を卑しい存在として差別する偏見、いまに残るその偏見も、ここから生まれたと思われます。
― で、庶民の上に立つ王朝貴族の人びともそろって、その勅令に従ってお肉は食べなかったのですか。
― はっは、どうして、どうして! 庶民には肉食をきびしく禁じておいて、自分たちはうまうまと食べていましたよ。
― まっ、ずるい!
― ずるい、ですか? 考えてみてください、いまの国会議員や政府の高官たちは、BSEにかかっているかも知れない輸入牛肉を、庶民には「食え、食え」「多少あぶないけれど、安いんだから、いいじゃないか」と押しつけながら、自分たちは口にしようとしないね。時代が変わった、というか、飛鳥時代とは逆転してしまいました。そうは言っても、あの人たち、国産の高級牛肉を高級料亭でバクバク食べているに違いありませんけれど。
― 庶民がお肉を食べられないのは、いつまで続いたのですか。
― 正式に肉食解禁になったのは明治5年(1872)です。明治天皇ご自身が肉食を奨励し、それを禁じるのはいわれなきことだ、としています。この天皇はフランス料理がお好きだったそうですから、それにはお肉が欠かせないですものね。
― ずいぶん長くつづいたのですねぇ、肉食禁止令は。
― でもね、いつだって人はいろいろ知恵を働かせるものです。実質、江戸時代には肉食は復活していたようです。肉はご法度だけれど魚ならいいじゃないか、と、イノシシのことを「ヤマクジラ」と呼んで食べていたといいます。魚類なら問題ないじゃないかという発想。獣類、すなわち哺乳類の捕獲とそれを食糧にすることが禁じられていたわけですが、その当時はまだ、クジラといえば魚の一種だという認識で、それも哺乳類だとは庶民は知りませんでしたので。小夜ちゃんは知っていましたか? 哺乳類ですよ、クジラは。
― したたかな江戸庶民の知恵。こう見てきますと、食べることが社会の文化を推し進める牽引車になっていたような…。食欲はどんな理不尽をも腐食させてしまうバクテリアみたいなものですね。
― はっは、バクテリアのような貪欲な食欲。生物発生以来、食べること、子孫を残すこと、…突き詰めれば、生きものの関心はそこに行き着きました。肉を食するようになった人間も、その例外ではありません。古代より狩猟がさかんにおこなわれていたことはよく知られています。4000年前にはもう、野生のイノシシを食用のブタとして家畜化していたようですよ。飛鳥時代のことが書かれた「播磨風土記」には「猪飼野(いかいの)」のことがくわしく記されています。天皇からこの地を賜ってイノシシを放ち飼いにし、育てあげたその肉を献上した、とあります。天皇に限らず、肉はだれにとっても重要な食糧源、主要な蛋白源だったのでしょうね。

◆日本人とイノシシ
― 古代の人が食べたお肉といえば、イノシシだったのですか。
― 縄文時代のことを文献で見ると、狩猟はイノシシとシカがほとんどでした。とくにイノシシは食肉の3分の2を占めていたとあります。
― 地方によっては、シカのことをシシということがありますね。宮澤賢治の「鹿踊りのはじまり」は、シカではなく「シシ」と読んでいます。
― イノシシを狩ることが多かったのは、それが田畑を荒らす害獣だったことにもよります。大事な作物を食い荒らしてしまう憎っくいヤツでもあった。
― 害獣ですか、イノシシは? 害獣、…イノシシ年生まれのおかあさんには、このこと秘密にしておいたほうがいいですね。去年、おとうさんと京都へ行ったとき、狛犬のかわりにイノシシのオスとメスが向かい合っている神社がありましたね。イノシシを悪い獣ではなく神聖視する人もいたのでは…。
― そうそう、小夜ちゃん、よく憶えているね。和気清麻呂(わけのきよまろ)を祀る護王神社の拝殿前にあったもの。ほかの神社にはイノシシの狛犬は多分ないと思いますね。道鏡の策略で遠い大隈(鹿児島県)に流された和気清麻呂。途中で道鏡の放った刺客に命を狙われますが、そのとき300頭のイノシシが現われて清麿を守り、宇佐神宮まで導いたという故事にもとづいて、土地の人がイノシシを祀ったとされています。
― いろいろありがとう。明日から新学期。もうお休みしますね。今夜はイノシシの夢を見るかしら。
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