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遠出 |
12月05日 (日) |
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今日、12月5日は、亡くなった祖父の誕生日だ。これは特別な日だ。祖父が生まれてくれたから、
現在の私たちがあるのだから。
もちろん、私に繋がる、総ての人がそうと言える。だが、祖父は特別だ。
母親が、「この子が生まれて来にゃ、いいが」と、
毎日、お腹をたたいていたという逆境の中に生まれた祖父だそうだ。
だから、祖父が生まれてきてくれたことは、奇跡とも言える。
里子に出された先は、かわいがってくれたそうだが、赤貧洗うがごとしだったという。
栄養状態が悪くて、鳥目になったと聞いている。
村一番の秀才だったのに小学校しか行かれず、
米屋なら飢えることはないと奉公に出るが、米騒動など社会不安の時期。
級友たちが、巧みに陶器(祖父の郷里は焼きもので有名な常滑)を作り出すのを見て、
不器用な自分が同じ事をしておったらダメだと思い、
関東大震災の後、「じきに寒くなる」と火鉢を買い占めて舟で東京へ売りに行き、
友人に店番させて自分は新たな注文を取る、というやり方で大いに稼いだとか。
いつの頃か知らないが、土管を作る会社に入り、そこで出世して、ついに経営者になる。
日本全国に鉄道が敷かれて行くに伴い、線路下に入れられる土管の需要は高まり、
四国で台風にあい、総ての荷物を身体にくくりつけて橋の上を這って渡り、
無事注文を取り付けたという逸話も残る。
そんな祖父が、懐に入れてかわいがってくれた。
家族がどんなに大切か、身に染みていた祖父だったから。
祖父の誕生日に、遠出をした。祖父の会話にも時々出ていた飯田に。
城下町で、伝統と品のあるところという印象だった。
そこに、私のラボっ子が、引っ越した先でラボを続けている。
今日はそのパーティのクリスマス発表会だというので、ふらっと訪ねてみた。
長男に運転させて行くので、楽だった。
車の中で、ヘンゼルとグレーテルの話をしながら行く。
精神的に成長をやめているヘンゼルの姿、子どもの成長を飲み込む、底なし沼のような母性、
お菓子の家、きちんと整えられたベッドなど、一見、恵まれた環境が実は子どもを殺している。
グレーテルは逆境にあって、成長し、魔女(母)を克服して、再生する。
そうして家に帰るので、そこには母親はもういない。
「そんな深い話とは知らなかった」と長男がいう。
甘えていては、成長しないんだよ。
捨て去る、飛び込む、切り捨てる、そういう勇気が、成長には関わってくる。
母親に捨てられた祖父は、逆境を跳ね返し、成功し、実母も実父も弟妹も、後年、祖父を頼った。
だが、自分自身の家族には、死や病、心得違いなど、悲劇的なことが続出する。
強い祖父が、夜中に仏壇の前で、声を殺してないている、
そんな祖父をみて、父は、絶対、自分だけは祖父を悲しませたくないと思ったという。
幸せだったら、恵まれていたら、そうは思わなかっただろうから、
やはり、禍福はあざなえる縄のごとし、なんだろうか。
おじいちゃん、誕生日おめでとう。生まれてきてくれてありがとう。
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