リュドミラ・バルフール |
03月19日 (木) |
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新宿のラボセンターで行われたリュドミラ・バルフールwsに参加した。新版アリスの絵を描かれた方だ。
現在はパリ在住でスコットランドに夏の別荘をもち、アリスの仕事は主にその別荘でしたそうで、
絵にも別荘の建物や周りの景色が出てくる。
バルフールさんのお話はフランスなまりの英語で。
ご本人の生い立ちからお話が始まり、スコットランド人のお母さんから伝説や昔話をたくさんきかされ、
デンマーク人の画家のお父さんから自由に絵を描く環境をもらったという。
学校のこうでなければならないや、大人の常識にしばられない生き方。
小さいとき、自分が描いた絵にタイトルをつけ、それについて物語ったという話を聞くと、
私たちがラボっ子の絵を「なになに、教えて。そうなの~」と聞きながら見入っていることが
とてもいいことなんだと再認識する。
国連の仕事をしていたご主人と中央アフリカに4年間住んだとき、
料理の本に挿絵を描くという仕事を続けていたそうだが、
何しろその国に郵便局がなく、隣の国の郵便局留めで仕事のやりとりをしたという。
できあがった本に何が書いてあるのか怪しまれ、
ヨーロッパ人はものを料理するのに、本を見ないとできないのかと、哀れに思われたという、
なんだか文明国の矛盾に救われたような体験に会場が湧いた。
わあ、バルフールさんって、おもしろい人なんだなあ。なんというか話芸がある。
アリスの原画を投影しながら解説、質疑応答。
このアリスの絵は、金髪で水色のワンピースに白いエプロンと、なんか定番かなと思いきや、
グロテスクともいえる登場人物が続々・・・・
バルフールさんは一つ一つのエピソードを語ってくれた。
前日に訪ねたKパーティのラボっ子も大いに質問したというから、私たちも、どんどん伺い、
思いもかけないお答えに感心したり、驚いたり。
ウサギのしっぽがどうも長いような気がします、というと、そうね、ちょっと長いかしらという。
きっとデニッシュなんですね、といったらこのジョークが気に入ったらしく、後々まで
変わった動物や生き物というと、デニッシュということになっていた。
(ウサギには、オランダ種、デンマーク種、垂れ耳種など、いろいろな品種がある)
キャタピラーが、芋虫(かわいい)というより毛虫(気持ち悪い)で、その点を聞いたら、
「かわいいかわいいしたものは描きたくない」とのこと。
芋虫は毒がないけど、毛虫は毒があってかぶれたりする。キノコ(毒もある)と関連があるのかしら。
そんなことを聞いてみたら、子どもの頃、毛虫の大群に出くわし、自分たちがよければいいものを
毛虫の行列の進路を変えようという大それた計画を実行し、
手や腕、首から顔までかぶれて大ごとだったという思い出話に発展して、おもしろかった。
バルフールさんは子どもの頃の体験や物語、伝説を今の自分の芸術に全てつぎ込んでいるんだ。
「だから楽しくてたまらないのよ」
じゃあ、公爵夫人の頭にはえてる鹿の角は、ギリシャ神話? そう伺ってみたら、
なにかの伝説や神話が根底にあるからいろいろなおもしろい生き物を創造して描いているといい、
また公爵夫人については、フランスの早口言葉「公爵夫人の靴下」というのがあって、
それで頭に鹿の角を生やして靴下をぶら下げたんだそうだ。
すごい収穫!
きちがい帽子屋についてだが、
帽子を作る過程でビーバー皮をなめすのに毒性の強い物を使うということが紹介され、
as mad as hatter というイディオム、
帽子屋があたまがおかしいのは毒性のある帽子をかぶっているからに他ならない、という。
なるほど・・・・
帽子屋のぼうしからチョウチョが飛んでて、隣にいる三月ウサギはくるくるの針金が飛び出している。
完全に壊れちゃってる状態?
昔あったよね、おもちゃやぬいぐるみ、壊れて針金やバネがとびだしてるの。
こうなるともう、ポンコツ状態。懐かしいなあ。
他にもいろいろ絵の解説や、皆さんから出た質問から楽しい解説を引き出すことになり、
ラボっ子たちと、もっと絵をじっくり見て楽しまなくちゃと思った。
あちこちにちりばめられた楽しいしかけ。
西欧世界の根底にある伝説、NR、神話、ご自身の文学体験、人生観・・・
そういったものが全てちりばめられているんですって。
ご一緒にいらした画廊の横島さんからも補足していただきながら、楽しい2時間があっという間に終わり、
購入した日本語の絵本にサインをしていただいた。
この日本語版の絵本は、うたのところが手書きになったり、
日本語だけで読み聞かせすることを念頭に置いた作りになっているそうだ。
サインは、リクエストした動物のイラストを入れてくださるというおまけつき!
私は「愛犬のゴールデンレトリーバーにして下さい」とお願いした。
むずかしいわ、といいながら、ティムが出現。
(アメリカゴールデンは毛が長くふさふさして大きくみえるが、イギリスゴールデンは比較的毛が短く、
スマートにみえる。バルフールさんのゴールデンはやはりイギリスゴールデンだった!)
早口言葉「公爵夫人の靴下」を書いていただけませんか?とお願いしたら、さらさらっと
書いてくださった。
やった! フランス語の早口言葉なんて、今日聞かないと一生お目にかかれないかも。
Les chaussets de l'Archiduchesse sont-elles seches ou archi-seches??
(seches の e は、` があります)
午後、日本橋の画廊に、原画展を見に行った。
うわあ、やっぱり、原画はいいなあ。テキストだと紙質が違うし、やはり息吹が・・・。
三月ウサギのくるくる・・・これ、気に入ったなあ。
それに、行列している絵、他にもキングやクイーンがいる・・・ということで、
キングフィッシャー(カワセミ)やクイーンビー(女王蜂)、アフリカの王さまや、
あっ!ゴールデンレトリーバー?の王様もいるよ。
バルフールさんのご主人(本人曰く)もいるそうだし、じゃあ、バルフールさんはどれ?
「私は、このおかしな人、かしら」
この登場人物たちは、どれも目がすごく印象的で、何か言いたげ。
そうだ、吹き出しを付けてラボっ子にセリフを書かせたらおもしろいだろうなあ。
他のエッチングの作品も、印象深いものだった。
私が気に入ったのは、Lady bird
NRの古典本にあるようなクラシックなタッチに仕上がっているその絵(エッチング)は、
女の子がテントウムシを指に這わせて、まさに Lady bird, lady bird fly away home・・・・
だが、その前のテーブルにはサイダーの瓶があり、そこからふしぎな上昇気流がおこって、
テントウムシの斑点が舞いあがり、女の子のかみの毛がふわふわさかだっている。
今までに見たlady bird の絵で一番いいと思う。
ちょっと欲しかったが・・・・
バルフールさんの絵は目がとても印象的。それに太い眉毛も。
アリスの登場人物たちは、やっぱりご本人にそっくり。
ラボセンターに引き続き、画廊でもバルフールさんから直にお話を伺うことができた。
原画展は日本橋「三越前」のギャラリー砂翁・トモスにて、28日まで。
http://www.jpin.co.jp/saoh
住所、アクセスおよび原画展の様子が見られます。
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Re:リュドミラ・バルフール(03月19日)
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Samiさん (2009年03月20日 10時13分)
昨日は本当に楽しいひとときでしたね。
もっと多くの方に聞いていただけたら、と思いました。
けど少人数で自由にお話できてよかったのかも。
詳しくまとめてくださってありがとうございます。
帰りの電車で内容を聞かれて、忘れていた部分もあったので、
思いだして参考になりました。
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Re:リュドミラ・バルフール(03月19日)
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Junkoさん (2009年03月26日 22時03分)
リュドミラ・バルフールさんとのワークショップのご様子を詳しく書い
てくださり有難うございます。遠方で行けない私にも情報が入り嬉しい
です。
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Re:Re:リュドミラ・バルフール(03月19日)
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カトリーヌさん (2009年03月26日 22時59分)
Junkoさん
アリスの原画展、28日まで日本橋でやっています。もっといろいろな場所で開催してくれると
いいですのに、ね。
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Re:Re:Re:リュドミラ・バルフール(03月19日)
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Junkoさん (2009年03月26日 23時32分)
カトリーヌさんへ
せめて名古屋で!
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Re:Re:Re:Re:リュドミラ・バルフール(03月19日)
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カトリーヌさん (2009年03月26日 23時39分)
Junkoさん
そうですね。ラボセンターでできればいいのに、ね~。
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