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3年ほど前に、箱根のマイセン庭園美術館を訪れて、マイセン人形に魅せられてしまった。
館長の村田朱実子さんが、ロンドンのアンティーク街で一対の人形「仮面舞踏会」を見つけ、その人形のとりこになってしまって、それが、マイセン美術館の開館のきっかけになったという。
大変な努力があったではあろうが、すばらしい人形たちをどんどんオークションなどで手に入れて、美術館に所蔵し飾られている。うらやましいほど素敵な静かな豊かな気持ちになれる空間である。一個すら手に入らないこの人形、私の気持ちを多少喜ばせるには、「そうだ! わたしの絵にしよう」と考えた。その10枚ほど。5月に予定している私の個展で展示しようと思っている。
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木目込み人形の教授資格を取って、木目込みを作り始めて12年になる。この間、何体作っただろうか。海外に行く人のお土産や、お祝い物として、ずいぶん作ってきた。
また、手持ちの人形を毎年3月の雛祭り前後に元ラボルームに飾ってきた。それを見て楽しむ人も増え、今年は木目込み教室が自然体で始まり、その人たちの作品も展示できることになった。雛を飾るということは、なんとなく華やいだ気持ち、春という感じでたのしいものだ。それぞれにかわいい「マイ・おひなさま」を楽しんでいる。
3月中飾って、適当に見てもらっているが、いろんな変わり雛が、興味を引いている。
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人形の新しい門出
ゆうべ女の子は押入れの奥からにぎやかな音を聞きました。朝起きて、おばあちゃんに話しましたが、気のない返事でした。
でもおばあちゃんは押入れの上の天袋を調べて、びっくりしました。
ダンボールの箱がふくらんで、中の人形が転がり出ていたのです。この人形たちは、おばあちゃんが娘のために手作りした50年前のもので、処分できずにいたものです。
女の子は箱から出てくる人形を一体一体感心して眺めていました。自分の雛人形に比べると、小さくて立派とはいえないけれど、なぜか「いいなあ」「かわいいね」と思って眺めていました。
女の子は
「これ、おばあちゃんがお母さんのために作ったお雛様」と聞きました。
「そうだよ。あんたに作ってあげたお雛様はね、木目込み人形と言って、材料を買って作ったの。でもこの人形たちは、おばあちゃんが、家にある古い布で工夫して作ったんだよ。お金が出来たら、いい人形を買ってやろうと思っていたんだけれどね、お母さんが[世界で一つの私のお雛様]と言ってくれたので、ずーっと、この人形を飾ってきたんだよ」
「私もこの人形大好き。頭や顔に触っても平気だし、髪の毛は黒い糸だもの。手で綺麗にしてあげられる。手も布で作ってある。お内裏様に三人官女、五人ばやしもすごく考えてある。鼓は何で作ってあるの」
「それはね、当ててごらん。と言っても解らないだろうね。ミシンの下糸を巻くボビンというものだよ」
「面白い。台はかまぼこの板なんだ。よく考えてある。15人もよく作ったね。」
女の子は飽きずに眺めていました。
「ねえ、おばあちゃん。お雛様飾ろうよ。私のお雛様も、このお雛様も、おばあちゃんが作ったほかの人形もみんな。」
それから二人は大忙し。
人形を二階に運び、飾り付けを始めました。50年前の人形は、袖のほつれ、首の緩みなどいろいろ直さねばなりません。机や箱など工夫して仕組んだ飾り台に、雛人形と童や能や歌舞伎の人形も加えてにぎやかな人形展会場が出来ました。
女の子は今までにない華やかなお雛飾りにうれしくなって、友達や近所の人たちに見に来てくださいと知らせて回りました。
毎日見に来てくれる人がいて、かまぼこの板にのったお雛様を感心して褒めていきました。その人たちの中に町の資料館に勤める女性がいました。
2、3日して、資料館の館長さんがやってきました。
「このお雛様を資料館に寄贈していただけないでしょうか。物を大切にして工夫して作られたお雛様を是非大切に飾らせていただきたいと思います。」
といいました。
おばあちゃんは、古い人形が、そんなお役に立てるならと、喜んで申し出を受け入れました。女の子も資料館に行けばいつでも見られると、喜びました。
その夜、おばあちゃんは、二階で笛や太鼓の音がするのに気がつき、そっと上がっていきました。五人ばやしの奏でる笛、太鼓に合わせて、人形たちが楽しそうにおどっています。しばらく見ていましたが、その日は静かに床につきました。
次の日、人形たちは何の変わりもなくすましているので、おばあちゃんは夢だったのかとも思いましたが、音は毎晩続くのでした。
明日は資料館へ移る日です。夜が更けると、二階がにぎやかです。おばあちゃんが上って行くと、華やかに全部の人形がおどりだし、古い雛人形の送別会をやっているのです。あまり美しいので、おばあちゃんは女の子も起こしてやりました。ご馳走もあり、お白酒もあり二人は別世界に迷い込んだように、しばらく呆然と眺めていました。
お内裏様が二人の前に来ていいました。
「長い間、大切に飾っていただいてありがとうございました。私たちは心をこめて作られた世界で一つの人形たちです。これからも、大勢の方々にみていただいて、物を大切に、また、賢く工夫することで豊かになることを示していきたいと思います。」
他の人形たちも
「大先輩を送り出し、後は私たち人形がみなさまご家族をお守りいたします。」
と約束しました。
次の日、資料館の人が来て、一体ずつ丁寧に紙に包み、箱に収めてもっていきました。
人形の新しい門出をおばあちゃんと女の子は喜んで見送りました。
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残り布などでいろいろなものを作るのが好きな私は、今年も暮れからせっせと少しの時間も利用して作っているものがある。洗濯ばさみをつかった「メッセージうさぎ」だ。何気なく見た本にヒントを得て、今年の喜びを運ぶウサギをたくさん作っている。
{7センチ四方の布2枚を中表に重ね、端をぐるりと縫う。上の布のみ真ん中を4センチ切り、表に返す。洗濯ばさみを入れて、切り口を縫い、とめる。切り口の反対側はぐしぬいで縫いちぢめる。一方、直径3センチの白い布で頭を作り、耳を作ってつける。20センチほどのリボンを縫いちぢめ、頭の下につけ、洗濯ばさみを入れた体につける。}
「これを差し上げますわ」「どうも、ありがとうございます。」・・・と言うような会話が物を差し上げるときの会話かと思うが、・・・・
このウサギを見せると、まず、「わー!」と歓声が上がる。
次は「かわいい」「かわいい」の連発。「ありがとう」よりも、「ほしい。ほしい」「うれしい」と言う言葉のほうが先に飛び出す。
私はこの瞬間がもっとも幸せを感じ、力をもらうときなのだ。小さな布で、家にあるものを利用して、笑顔の出る瞬間を作れれば、なんと幸せなことであろう。今年もよい年でありますように!
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福島県の親戚に行く用事があって、予定を立てた。交通費もしっかりかかるので、そのついでに暇の使い方を考えた。フラを始め、その頃映画、「フラガール」を見た。それから、ずっと、いつか、いわきのスパリゾート・ハワイアンズへ行きたいと思っていた。
東京駅から、無料バスが出ていることも調べた。リゾートよりもショーが目的だから、シアターのSS席も予約し、さらに期待してフラのドレスも持って出かけた。
福島だからと、寒さ対策をしていったので、それらは全部、手荷物になってしまった。一年中、28℃という常夏の楽園だ。早速ドレスに着替えて、一列目の真ん中におさまる。カメラもOKだ。ショーの中ほどで、観客の体験タイムがある。舞台に上がった。ほんの少しの時間、短い歌を踊っただけだが、気持ちよかった。
気がつくと、いつものフラのレッスンの時間だ。休むとは言ってきたが、どこへ行くとはいってなかった。ちょっといたずら・・・・。写メールと共にスパリゾート・ハワイアンズに来ていることをメールする。みんなのびっくりする顔を想像しながら。
さて、当然みんなに土産がいる。今度のハワイアン・コンサートのとき、ピンクのドレスにつける花をおそろいで買った。
次のレッスンの日。「雰囲気でも見る」といって、プリントアウトした十数枚の写真を見せた。一枚、一枚静かに見ていく。そのうち、「え~」と叫びだす。「なにこれ! ドレスもっていったの? 踊ったの? なに踊ったの・・」とわいわい。12月の熱い一日だった。
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四季のある国に住む日本人は、その折々の風情を味わうのが習慣のように文学にも生活の中にも入り込んでいる。私も四季折々あちらこちら歩きたいし、季節を食べたい。
高山市の荘川高原は海抜約千メートル。一足早く冬が来る。紅葉のせせらぎ街道を通り、林道に入ると、もはや紅葉は終わる。初冬の枯葉の木々となる。荘川高原は道いっぱいに落ち葉、ホウの葉の裏が白く光る。夏、伸びすぎて困った草も、みんな枯れて斜面の凸凹が目立つようになった。小屋の裏に丸く掘った穴が、ぽっこりと現れている。それを見て、ちょっと、どっきり。・・・・・それは、夏の滞在中に、スイカの皮だけは水分が多くて困るからと、他のごみとは別に、土を掘って埋めておいたのだ。その穴が、いまぽっこりと現れ、綺麗に中身がなくなっていた。何がこんなに綺麗に食べて行ったのだろうか。リスの姿は見たことあるが、もっと大きなもののように思われる。われわれの居ない間に、この高原の原獣民が、みまわりしているのだなと思うと、それを知りたくもあるし、楽しくもなる。
こんなところで、一ヶ月前は、栗をいっぱい拾っていた。歌のように「大きな栗の木の下で、あなたとわたし」いっぱい、いっぱい、栗を拾った。それこそテレビのニュースでどんぐりがなくてくまたちが困っていると聞くと、「ここにたくさんくりがあるよ」と教えてあげたいくらい。山栗なので、小さくて、普通の栗のようには食べるのが大変だ。栗ご飯にも皮をむくのが大変、ゆでて食べるにも小さすぎる。こんな栗を、私はいっぱい拾い、ゆでて全部包丁で切り、スプーンで実をかき出し、それを裏ごしして、栗きんとんにした。今年はたくさん出来たので、みんなに食べてもらった。栗100%。香りもよく、食感も滑らか。食べてもらった人は、みんな喜んでくれた。「これ、栗何個ぐらい?」「めんどうなこと」「熊、大丈夫?」などといいながら。
この高原は、早春のふきのとうから始まって、わらび、ぜんまい、ふき、せり、こごみ、つくしなどなど。四季折々楽しませてくれるが、この10年ほどを考えても、気温、天候の加減で、一ヶ月ほどのずれがある。自然の中で生きている生きものたち、十分食べ物はあるだろうか。ゆっくり冬眠できるだろうか。
人間は、自分の住まいを守るため、水道管などの水抜きをして、不凍液を入れて帰ってきた。
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憲じいさん
憲じいさんは絵描きです。
憲じいさんの家の裏庭には、今日も男の子が三人遊びに来ています。声を聞きつけた憲じいさんは、ニコニコして出てきました。
「あ、先生だ。こんにちは。」
「おお、元気だな。今日は何だ。バットなんか持ってきて。」
「先生、ぼくの絵、描いてください。」
「あゝ、そういうことか。じゃ、ちょっとまってな。」
憲じいさんは色紙と、太いペンと細いペン色づけするための水彩絵の具を持ってきました。
「わかったぞ。君は野球選手を夢見ているんだな。バッターか。・・・がんばれよ。」
憲じいさんはおしゃべりしながら似顔絵を描いていきます。10分ほどで笑っている男の子の顔を描きました。
「すごい。似てる、似てる。」
友達もうれしそうに手をたたきました。憲じいさんはその顔に振り(からだ)をつけます。バットを持たせ、片足のつま先を立てて、ボールをうとうとする瞬間のポーズです。それに色付けして完成です。
「はい、どうぞ。大きい夢を持てよ。」
友達の一人が言いました。
「先生、この間描いてもらった僕の絵ね、壁に飾って毎日見ているよ。ぼく、あのコックさんの白い帽子が好きなんだ。いつか、ホテルのコック長になる。」
「先生、ありがとう。またくるね。」
子どもたちは帰っていきました。庭は静かになりました。
憲じいさんは縁側に坐って、デパートの屋上をながめながら、若い頃から今まで描いてきた絵を思い出していました。
小さい頃から絵が好きでしたが、家が貧しくて美術学校には行かず、独学で絵の勉強をしてきました。いろいろな展覧会に出品し、入選、入賞して、だんだん注目されるようになりました。憲じいさんは、生活の苦しいときも、難しい問題にぶつかったときも、いつも明るい未来を夢見て、楽しく絵を描いてきました。憲じいさんの絵は、色使いが明るく、いつも希望にあふれていると評判でした。憲じいさんがキャンバスに向かって描き始めると、体の中から熱いものが噴き出し、不思議なパワーがその絵を完成させるのです。
そんなある日、デパートが一周年記念のイベントをやりました。「絵描きさんに子どもの似顔絵を描いてもらいましょう。」というのです。
五人の画家が並んでイベントがはじまると、子どもの絵を描いてもらいたいと思う親子の列が出来ました。画家たちは、一生懸命描いていました。列の中におばあさんにつれられた一人の男の子がいました。その子は片方の目が不自由でした。どの画家もその子が自分に当たらないようにと思っていたに違いありません。
憲じいさんの前にその子は坐りました。おばあさんは、この子は難産のため弱視で生まれ、母親は亡くなってしまったことを話しました。
「僕は、元気だね。大きくなったら何になりたいの。」
「ぼくはね、おいしゃさん。」
「そうか。お医者さんになったら、おじさんもみてもらおうかなあ。」
憲じいさんは男の子の緊張をほぐすように、やさしく語りかけながら、顔をかいていきました。うそを描くわけではないけれど、憲じいさんは、この子の目がよくなって、希望がかなえられるようにと願いをこめて描きました。おばあさんはその絵を大切に持ち帰りました。
その後、憲じいさんはデパートの広告のイラストを頼まれました。憲じいさんの絵は楽しい夢のある絵でした。デパートは大きくなり、憲じいさんの絵のように屋上に遊園地のある楽しい場所としてみんなに愛されるようになりました。
それから、十数年後、そのデパートの中に、クリニックが出来ました。クリニックの若い院長は、憲じいさんのところへ来て、丁寧に挨拶しました。
「小さいときに描いてもらった絵は、私のお守りでした。きっと目が開くときがあると信じて、希望を持って生きてきました。先生の絵は本当に不思議な力を与えてくれます。おかげで、医者になることができました。」と。
こうして、憲じいさんに感謝の気持ちを持つ人は大勢います。夢、希望を描く絵描きさんとして多くの人から愛され、今もいろんな人が訪ねてきます。毎日が楽しく、デパートの屋上を眺めながら、また次の夢を描こうとしています。
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人が定年退職を迎えたり、長年やってきた仕事をやめて、新しい環境のところで何かをやろうするとき、誰でも今までの手馴れたこと、気の知れた仲間と違った雰囲気、理解しにくい出来事に戸惑いを感じることがあるだろう。
テューターと言う仕事は、幼児から大学生のラボっこと日常の活動をやり、その後ろには父母たち、地域への語りかけ、テューター仲間との共同、などなどどっちを向いても「ひと」相手で、疲れるなあ、と思ったこともある。そんなたくさんの人と交わって相当いろんな経験をしたつもりだが、・・・・新たな仲間を作ることは難しい。
テューター仲間とは違う世界、絵、お細工、木目込み、ウクレレなどのグループ。これらの仲間は普通に仲良くしていればいい。と言うのは個々の作業で済む形だから。ところがフラをはじめて5年。ハワイアンコンサートなどで踊るこの頃、4人での群舞をやる、このメンバーでは普通に仲良くでは、だめなのだった。もっと心が通い気持ちが一つにならなければ、群舞としてしっくりいかないように思う。
ラボをやめた私はもうゆったりと、何でもついて周りでいい、と思ってやっていたのだが・・・・
何を決めようと思っても、「どっちでもいいよ」と言う返事。「今度は何を着る?」「なににしよう」「黄色のワンピースはどう?」「あゝ、そう」と言うような会話。結果は、これで黄色のワンピースに決まったと人は思ったのだった・・・・・こんな状態に私はなれることは出来ず、やっぱりみんなの気持ちがはっきりするように、こうしたほうがいいと思えば、はっきりとリードするように私の出来ることはやろうと、態度を変えた。4人は、レパートリーも増え、楽しくフラを続けている。揃える衣装も安くはない。リメイクしたり、レイやハクレイも1万円ぐらいするものも、百円ショップで造花を買ってフエルトにグルーガンでくっつける。千円ぐらいで出来てしまう。みんなは思わず笑顔になってしまう。私にとってはたいしたことではないけれど、なんとなく頼られてまとめ役になれば、みんな元気でより楽しそうなのだ。
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{紙飛行機にのせた夢}
「紳ちゃん、もう寝る時間よ」
「わかった。でももうちょっとね。この紙飛行機もう少しで出来上がるから。」
紳の机の上は、紙飛行機でいっぱいです。小さい頃から飛行機が大好き。というのも、紳のお父さんは、毎月十日間くらいはインドで仕事をしています。ダイヤモンドを買い付けてくるのです。だから紳は、お父さんの留守の寂しさから、空を飛ぶこと、インドってどんなところだろうと言う想像と夢につながって、それが、折り紙飛行機から今では翼、尾翼、胴体と設計していろいろ工夫しブーメランのように高く飛んで自分のところへもどってくるようなものも作れるようになったのです。
「よし、できた。これでいいかな。」
紳が、満足そうにできたての新しい飛行機を眺めていると、足元で眠りかけていた犬のチロがさっとその飛行機をくわえて庭へ走り出ていきました。
「おい、チロ、なにするんだよ。」
紳も後を追って庭へ出ました。
「えっ!これはなに。」
紳は、びっくりです。机の上で作った自分の飛行機なのですが、大きくなって、紳が乗れるくらいです。
「紳ちゃんもチロくんもどうぞおのりください。」
飛行機の声がします。不思議に思いながらも、紳は大喜びでのりこみました。
エンジンの音がして、飛行機は飛び上がりました。あっという間にお星様に届きそうです。
「どこへ行きましょうか。お父さんのところへ行きますか。」
「え~っ?」
紳はちょっと困りました。
「それはうれしいけど、お母さんに知らせてこなきゃ」
飛行機のすぐ側に、大きなダイヤモンドのような星が輝いています。紳の飛行機はブーメランのようにもとの位置にもどるように作られているので、その星を回ったかと思うと、チロが叫びました。
「紳ちゃんのうちが見えるよ。」
「じゃぁ、ぼく、お母さんに知らせてくるからね。」
紳は飛行機からとびおりたので、背中からドスンと、庭の芝生の上に落ちました。
そして紳は、すぐにお母さんの声を聞きました。
「紳ちゃん、ちゃんとベッドで寝てくださいね。お母さん一人で運ぶの、大変だったわよ。 じゃ、お・や・す・み。」
次の日の夕方、お父さんが出張から帰ってきました。紳は夕べの不思議な出来事は、秘密にしていました。
「そうだ、紳、不思議なことがあったよ。」
お父さんは言いました。
「今朝、インドから帰って、東京の会社に寄ったらさ、窓からふわっと、こんな紙飛行機が舞い込んできたんだよ。紳と同じように、紙飛行機の好きな子が作ったんだろうな。なかなかよく出来ているよ。」
お父さんは続けました。
「それから今年の夏休みにはさ、お父さんと一緒にインドへ行こう。お父さんの友達が紳を預かってやると約束してくれたんだ。インドにホームステイだ。いいだろ? 紳。」
「うん。やったー!」
といったつもりだったが、紳は声になりませんでした。うれしい。本当の飛行機に乗れる。お父さんが仕事をしているインドへ行ける。
紳は、お父さんが会社から持ってきた飛行機を手にとってじっと見ました。そして尾翼の裏をそっと見ました。ありました。紳のサイン。「SK―155」紳は話しかけました。
「ありがとう。SK―155.。 ぼく、飛行機のこともっともっと研究するよ。」
紳の気持ちが何でもわかっているような、あったかい飛行機は、紳の手にしっかりとにぎられていました。
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これは、5年ほど前に作ったものである。誕生日プレゼントとして何か手作りのものをと思ったとき思いつき、5歳の孫のために作ったものである。
50センチほどのバックの3辺のファスナーを開けると、ABC26文字のポケットが並び、そこに小さいフエルトの動物が入っていると言うものだ。
これを作ったとき、これだけでは、5歳の子どもは遊べないな、と思い、本も作って添えたのだった。
先日、まだそれが健在だったのを知った。
マイABCアニマル・トレイン
バック
バックの中
手作り本
「A]
ぼくAlligatorわにです。どうぞよろしく。わたしたちAntありも、のりたいのですけれど。きみたちは、ちいさすぎるからだめ。では、つぎは。
ちよっとまって、ぼくバックのおもてのとくべつれっしゃにのっています。Antelopeといいます。かもしかににていますね。りっぱなつのをもっています。だからとくべつれっしゃにのせてもらったのでしょう。
[B]
ぼくBearくまです。みんなよくしってるよね。
[C]
Cowうし。ぎゅうにゅうのすきな子はげんきなんだよ。
Catネコ。わたしたちはとくべつよね。みんなにかわいいっていわれるものね。だから、とくべつれっしゃにのせてもらったの。
ぼくもおぼえてくださいよ。さばくではだいじなどうぶつです。Camelらくだです。
[D]
Deerしか。こんなつの、みたことありますか。ちょっとりっぱすぎますね。わたしは、どうしてのれないの、Duckあひる。みんなとなかよしなのに。ぷん! ぼくもいるよ。Dolphinいるか。でもぼくは、れっしゃよりおよいでいたほうがいいですから。
[E]
Elephantぞう。どうぶつえんではいちばんのにんきものですよ。
[F]
Flamingoフラミンゴ。わたし、きれいでしょ。Frogかえる。ぼくもぴょんぴょんとんで、いまから、れっしゃをおっかけようかな。
[G]
Giraffきりん。どこにいても、ぼくはよくめだちます。みんなだいすきですよね。
[H]
Horseうま。ぼくほどみなさんのやくにたつどうぶつはいませんよ。ぼくははしることがとくいです。やくにたつといえば、わたしよ。わたしのたまごは、まいにちたべるでしょう。Henめんどりですよ。
[I]
Iguanaイグアナ。おおきなとかげですよ。「I」ではじまるどうぶつはいなくて。よくぼくのことを、みつけてくれましたね。
[J]
Jaguarジャガー。ぼくはジャングルにいるんだ。
[K]
Koalaコアラ。みんながかわいいといってだっこしてくれるけど、ほんとうは、しずかに木の上でユーカリのはっぱをたべていたいの。Kangarooカンガルー。わたしはおなかの子といっしょにれっしゃにのるのはたいへんで。コアラちゃんたのむね。
[L]
Lionライオン。だれでもしっているライオンじゃ。けもののおおさまといってくれる。このたてがみのせいかな? そんなにつよいかな?
[M]
Monkeyさる。おおきいの、ちいさいの、てのながいの、いろんなしゅるいがあるよ。そうそう、モンキーセンターでみてくれたね。
[N]
Nightingaleうぐいす。わたしのこえは、とてもきれいだといわれています。なきごえは、ホーホケキョときこえるそうです。わたしに、れっしゃにのるようにいわれましたが、なんだか「N」のつくどうぶつがいないんですって。
[O]
Octopusたこ。たこのあしはなんぼん?8ほんだよ。いかのあしは10ぽんだ。なかなかかぞえられないだろうがね。
[P]
Pigぶた。なんといってもわたしたちは、みなさんのかていにいちばんちかいそんざいです。ぶたにくなしでは、せいかつできないでしょう。
[Q]
Quailうずら。わたしをみたことないんですって?・・・そう。でもたまごはしっているでしょ。かわいいたまご。
[R]
Rabbitうさぎ。かわいいし、みみをながくすれば、えにもかきやすいし、みんながだいすきなどうぶつです。
[S]
Snakeへび。わたしを、きらうひともいますけど、かわいいところもありますよ。なんといってもこのれっしゃには、いちばんにのったんです。おばあちゃんはわたしを、さいしょにつくったんですよ。ちょっと、ないしょばなし・・・このわたしのふく、おじいちゃんのネクタイなの。
[T]
Turtleかめ。ぼく、きれいなかめです。し・あ・わ・せ。ちぇ!かめのヤツ、しあわせ、なんて。Turtleとtigerと、どっちにしようかと、おばあちゃんはずいぶんまよったんだぜ。
[U]
Unicornユニコーン。いっかくじゅうです。うまににていて、つのがいっぽん。いろんなものがたりにでてきます。
[V]
Vixenめすぎつね。きれいなきものでもきたいわね。あねさまぎつねといって、おはなしにでてくるのよ。
[W]
Wild boarいのしし。まっすぐ、まっすぐとっしんだ。はじめ、おばあちゃんは、ぼくWhaleくじらをつくるつもりだったんです。いのししにまけちゃったけど、まあ、ぼくはれっしゃより、おおうなばらでおよいでいたいです。わたしWolfおおかみもたいせつなどうぶつなんですけれど、れっしゃにはのれませんでした。
[X]
foXきつね。ぼくたちのしっぽはりっぱだよ。なにしろ、「X」ではじまることばは、すくないんだよ。だからぼくがえらばれた。おやくにたてて、うれしいよ。
[Y]
Yakヤク。「ながげのやぎゅう」といってもよくわからないかなあ。
[Z]
Zebraしまうま。きれいなしまもよう。アフリカのそうげんが、うまれです。これでぜんいんです。
では、まいにち、まいごにならないように、れっしゃにのりおくれないように、げんきにあそんでください。
どうぶつたち、あつまれ!
れっしゃにのりこめ!
はこをまちがえるな!はっしゃオーライ!しゅっぱつ、しんこう!
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