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ギャッベとの出会い |
05月07日 (木) |
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ギャッベ(GABBEH)との出会い
連休は遠く離れて暮らす娘、息子家族が来てくれて、高山、荘川のセカンドハウスで楽しい数日を過ごした。子供たちが成長すると家族全員が集合するのも容易ではなくなる。そんな意味でも貴重な時間であった。
標高1000メートルの高原はまだ少し雪が残り、土筆やふきのとう、こごみなど少し遅い春を味わうことができた。有名な荘川桜も見ごろを迎え、あちこち楽しんでいた中で、私を20数年前に引き戻す出会いがあった。
それは
ギャッベ!?
(GABBEH イランの遊牧民カシュガイの 草木染め絨毯)
私たちが好んで訪れる高級な木製品を製造しているオークヴィレッジ。
そこに「ギャッベの特別展示場」としてあった。
はじめは、ギャッベ? 「あぁ、絨毯か」と思いながら会場へ入り、製品を見た途端、ハッとした。
私は「キルム?」とつぶやいた。
「はい、キルムもございます」といってスタッフが奥を指さした。
どちらもイラン遊牧民が昔から代々受け継ぎながら織る織物で、キルムは平織の布。比較的軽く、寒さしのぎにかけたり、くるりと巻いて手軽に持ち運べる家具という感じで使われるらしい。
20数年前、私はキルムと出会い、赤を基調としたその色の美しさ、その文様の個性的な美しさに魅かれた。アートとして眺めていたかったと思う。
そしてその頃買い求めた「キルムのある部屋」(ナデール・モラディアン監修)は、私のときどき楽しめる本として大切にしてあった。
キルムもギャッベも遊牧民の女性たちがその豊かな感性で、家族の幸せを願う文様を織り込むのである。
そうした、ある民族に古代から受け継がれた手工芸品には、人間としてのしあわせでありたいという願望、一方で人間ではどうにもならない自然界への畏怖の念。
そこからさらに強い魂の叫びが伝わってくるように思える。
そしてその手工芸品は立派なアートである。
私はそんな民芸品に出会うと、(ほんの遊びでしかないのだが)それを何とか自分の身近に取り入れたくなって、いろいろ工夫してみる。
今思い出すものとしては、アイヌ民族にはまっていたころ、アイヌの布に施してある刺繍を自分でやってみたこと。
また、ある時出会った「モラ」(カリブ海の小島、クーナ族の女性が幾重にも重ねた布で模様を描き出す手芸)の展覧会で、実際に現地の女性の使ったモラを手に入れた。作りたいと思っても、3色、布3枚くらいで作る簡単な絵柄しかできない。
買い求めたすてきなモラは、バッグに仕立てた。
こんな熱く生きていたころを思い出し・・・・・・
さて、静かな山里、素朴な中に暖かさのあるギャッベの展示会場。どれもいいなあ、と眺めながら、身辺の整理をはじめようとしている後期高齢者の身としては、「欲しい」という欲望は出てこなかったが、そこにおいてあった売り物ではない「本」が欲しいと思っていた。
こんな、私の心の動きとは別に、ふと気が付くと、ちょうど自分のリビングに絨毯が欲しいと思っていた娘が、ギャッベに心を動かされたらしく、孫を交えて品定めをしていた。
何とも素敵な出会い。娘の気に入ったものがあって、気持ちのいい買い物をした。
そのおかげで、私は欲しい本、「GABBEH」をプレゼントしてもらった。
その夜、ロッジで家族はトランプに興じた。何回もwinnerをとり続ける娘に「ギャッベの神様の精だ!」と、みんなが冷やかした。
エネルギーを感じ、喜びを感じる買い物ができたことはうれしい。
「GABBEH」 向村春樹・片岡弘子著 新宿書房
キリムのある部屋
「モラモラ」 久我通世 作・絵 講談社
キリムや ギャッベに使われる図案の例
すべて「愛」とか「勇気」、豊穣、魔除けなどの意味を持つ
モラの布で作ったバッグ
アイヌのししゅうを刺してみたもの
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