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ちゃこの童話(10) |
06月27日 (水) |
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いちご畑からの出発
里子は本を読むことが大好き。そして物語に出てくるいろんな国にいってみたいな、あんなお城に住みたいな、などと夢を描いている少女です。
里子のおばあさんは農家です。広い畑を持っています。今は、イチゴの収穫期ですが、少し気弱になっています。腰が痛くて仕事がうまく出来ないからです。
「もう、農業はだめだわ。やめようかなあ。」
といいます。
里子はおばあさんに代わってかごを持って畑にやってきました。
赤いつやつやしたイチゴがいっぱいです。
一生懸命とりました。するとありの一群がきていました。
「あら、あなたたち、他人の畑で勝手に食べてるの。」
「はい。 だって甘くておいしいです。生きていかなくてはならないし。」
「そうね。いいわよ。たくさん食べなさい。その代わり、手伝ってちょうだいね。イチゴを採ってかごにいれるのよ。」
そうして一緒に働いていると、うさぎの親子がやってきました。
「大好きなイチゴ、少し食べさせてください。」
「いいわよ。食べたら手伝ってね。」
その日の収穫が終わって、明日もみんなで採ろうと約束して帰りました。
その夜、おばあさんはイチゴをより分け、形のよいものは市場に売り、残りでジャムを作りました。余りたくさん採れたので、おばあさんは隣のうちの夫婦に手伝ってもらいました。
次の日、里子は畑に行き
「みなさん、イチゴ狩りを始めますよ。」
と呼びかけました。昨日のありやうさぎのほかに、いたちや、アライグマ、アヒルにヤギ、いのししもきました。
里子はいいました。
「みなさん、よく来てくれました。私のいる間は、いっぱい食べていいですよ。でも夜は畑を荒らしたりしないでください。作物が成長できませんからね。では赤いイチゴを上手にとってかごに入れてください。」
みんなは、わいわいがやがや、食べて、とってかごに入れて、一生懸命働きました。収穫が終わると、おばあさんがびっくりするほどたくさんのイチゴがありました。
「もっと、人手が要るね。」
前のうちのおばあさんも、後ろの家のおかみさんも呼んできてジャムを作りました。
次に里子が畑に行くと、不思議です。イチゴ畑が広くなっている気がします。
さあ、イチゴ狩りの始まりです。どこからともなく、大勢がやってきて、楽しそうに手伝ってくれます。
ジャムつくりの仕事場もひろくし、働く人も増やさなければなりません。地域の人たちも仕事が出来て大喜びです。腰の痛かったおばあさんも、すっかり元気になりました。
里子がさらに驚いたのは、イチゴ畑に行くたびに畑が広くなり、そのかなたに里子が夢に描いていたようなお城が見えるのです。そしてイチゴ畑の続きには緑の畑が広がっています。トウモロコシ畑のようです。一体、誰が作っているのでしょう。その日もどっさり収穫して帰りました。
次に里子が畑に行くと、今度はお城ではなく、男の人がいました。里子は「あっ!この人だ。」と思いましたが、それが誰なのか、どこであった人なのか、思い出せません。ただ、懐かしい、前から知っている人、私の大切な人という感じしかしないのです。
「里ちゃん、ありがとう。よく働いてくれたね。もう、ここは大丈夫だよ。ぼくらの使命はもっと他にある。つぎにぼくたちの力を必要としている土地へ行って一緒に働こう。」
里子は、夢を見ているような気持ちになって家に帰りました。まるで王子様といっしょにお城へ帰るような気分でした。
里子はおばあさんを連れて、イチゴ畑を見に来ました。イチゴの時期はもう終わりです。
「よく働いてくれたね。みんなの力を借りることも必要だ。みんなのおかげで、私も元気になれたよ。町の人たちも喜んでいる。私も次の野菜をみんなと一緒につくっていくよ。里子も大きく成長した。おばあさんと一緒でなく、広い世界にはばたきなさい。」
里子の夢は大きくふくらみました。おばあさんに祝福されて、みんなに励まされて、広い世界で自分の力をためそう。人のためになる仕事をしよう。楽しい日々を信じて。
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