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ちゃこの童話(1) |
05月19日 (水) |
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ふしぎなあかいいちご
女の子の家は、おいしい高原野菜を育てている農家です。もうすぐイチゴを出荷する頃ですが、今年は、様子が違います。はるがきたぞ!とイチゴが大きくなると、また雪が降りお日様が出ないので、イチゴは赤くなれません。女の子は、家族や、近所の人たちの困っている話を毎日聞いて、どうしたらいいのだろうと思っていました。
女の子も心配になって、昨日も今日も畑を見に来ています。イチゴ畑には、うっすらと雪がかかって、イチゴはかたいうす緑色のままです。
足元の雪が、バサッとはねあがりました。かわいい野うさぎが現れました。ウサギは女の子を見てびっくりして逃げようとしましたが、女の子がやさしくしゃがみこむので、ウサギもじっとしていました。
「ウサギさんも、イチゴがほしいの。まだ食べられないね。今は、こんなものしかないけれど、食べる?」
と、いって、女の子はポケットに入っていた食べかけのパンを出してやりました。ウサギは、それをくわえて走り去りました。
次の日も、次の日も、風が吹いて寒い日でした。女の子は今日も心配そうに畑に来ていました。すると男の子が現れて、女の子の方に近づき、もじもじしています。
「あの・・・。これ。」
と言って、差し出したのは、赤い手袋でした。
「わあ、かわいい。わたしにくれるの?」
女の子はよろこんで手を入れてみました。なんだかしっとりとした肌ざわりです。
男の子はいいました。
「この手袋で、イチゴをやさしくなでてください。でも、おねがいです。この手袋は、この一つしかありません。君と僕の秘密として、みんなに知らせずそっとやってください。」
女の子は、何か不思議な気持ちになりましたが、その手袋で、イチゴをくるくるとなでていきました。だんだん手袋は薄くなり、指が出てきます。それでも女の子は一生懸命。隣の畑も、つぎの畑も、手袋の小指までなくなり、ほんの少しの赤色がなくなるまで、イチゴをなで続けました。
次の日、みんなは畑を見てびっくりです。イチゴが収穫できるので大喜びです。みんなが忙しく働いていると、また、男の子がそっと立っています。
「おや、近くに引っ越して来た子かねえ。はじめて見る子だね。」と、隣のおばさんが言いました。
女の子は、
「私の友達なの」
と、言って、急いでイチゴを袋に入れて、男の子に渡しました。男の子は、お礼を言ってすぐ立ち去りました。どの道を通って帰ったかは、わかりませんが、夕方、高原の上のほうで、三匹の野うさぎが元気に飛び跳ねているのを見ました。
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