水村美苗の母、節子が、母のことを中心に書いた小説である
小説というより家族の歴史である
70代を過ぎて八木義徳主催の文章教室に通い、執筆し、出版されたという
水村美苗は小さい頃にこの祖母にかわいがられた
『日本語で読むということ』197p祖母と母と私
水村美苗が手を入れていると認めているが、
一番いいところは母のものだと書いている
節子は1921年生まれなので、私の母とほぼ同じ年代である
母がこどもである私を連れて行ってくれるところは、父母の親戚が多い
いろいろな家庭がある 行ったり来りがある
年ごとの贈答もある
親戚付き合いを大切にしている 付き合い方に厚みがある
あまり豊かではない、歳の差がある父母、
身なりをかまわず、教養もない、
美も知も富もないと母を恥ずかしく思うようになる節子
親戚の高台にある家をうらやましく思う節子
節子が成長してゆく中で、隠されていた母の秘密、父母の秘密が明らかになってゆく
そして父と母の別れ・・・
第二次大戦前の日本人の暮らしや文化の息づかいが細やかに描かれている
母の生きた時代の庶民の暮らし、お金持ちの暮らし、その行き来が見えてくる小説であった
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