絵本の文章力 |
02月04日 (水) |
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わたしがとっている福音館書店のメルマガの中で、松居直さんの文章で興味深いものが紹介されていた。やはり、翻訳絵本というものは、日本語の文章がすばらしくないといけないのだと、本物の文章、日本語の大切さを改めて感じた。
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『1979年の秋のこと、私のもっとも尊敬するアメリカの絵本作家のマーシャ・ブラウンさんから、突然、電話をいただきました。
「今、中国からの帰りで東京に来ています。ぜひお会いしたい」とのことです。私はびっくりするやら嬉しいやら、早速、宿泊先のホテルヘとんでゆきました。
そしていろいろお話をしていた中で、いちばん印象的だったのは、絵本『三びきのやぎのがらがらどん』のことでした。この絵本は文も絵もブラウンさんで、彼女の代表作です。
「どうしてあの絵本が、あれほど日本人に読まれるのですか? 日本の子ども
は、あのノルウェーの昔話がなぜ好きなのでしょう」と質問されたのです。とっさのことで私は答えに窮し、「あのドラマティックな力強い物語と、それにピッタリ合ったすばらしい挿絵の魅力でしょう。要するに絵本としてみごとな出来栄えですから」といった、ありきたりのことしか言えませんでした。
「でも、アメリカでよりも、日本での方がよく売れているのですよ。なぜでしょうか」とたたみかけられ、その場で納得のゆく説明ができませんでした。その後ずっと、これは私にとって大きな課題となっていました。そして日本での読者の反応や評価などをもとに、考えつづけました。その結果、あの絵本が日本の子どもに受けいれられ歓ばれる最大の理由は、訳者の瀬田貞二さんの日本語の文章の力だと思いいたりました。
わが国の古典文学に精通し、日本語の粋と、言葉が子どもに働きかける力を知りつくしていた瀬田さんの文章力が、ブラウンさんの絵にゆたかに秘められている物語る力を、みごとに引き出しているのです。
瀬田さんの訳文は、いわゆる子ども向きの甘くやさしい表現ではなく、幼児にはむずかしい言葉やいいまわしが、大胆に使われています。しかしその言葉の選び方や組みたて方はみごとで、文体の力強い響きやリズム、そして調べが、子どもの耳にまっすぐに伝わり、気持をわくわくさせます。子どもは本来、実に良い聴き耳をもっていて、言葉の力を微妙に鋭く感じとり、我を忘れて言葉の世界にはいりこみます。
子どもが歓ぶ絵本には、共通した特徴がみられます。声に出して語られる文章が、それぞれ個性的ですばらしいのです。絵本はその文章を音読し、耳で聴いてみてはじめて評価できるのです。因みに、『三びきのやぎのがらがらどん』は1965年の初版以来、約200万部の発行部数を記録する大ベストセラーです。松居直』
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この他に、神沢利子さんの新書★『鹿よ おれの兄弟よ』 神沢利子 作 /G・D・パヴリーシン 絵は、新刊ライブラリーで取り組まれているものに共通するものがありそうで、早速読んでみたい。神沢さんのコメントも載っていたので紹介します。
『欲ばらず、むさぼらず、すべてのものに精霊の宿りを信じ、いのちへの畏敬を忘れなかったわたしたちの祖先の思いを伝える少数民族の人びと。その思いをわたしも伝えたいのです。今を生きる日本の子どもたち、世界の子どもたちへ。そしてこの物語の故郷、ウデヘ族や少数民族の人々、なかでも子どもたちへ。そしてできるならば彼の地へもう一度訪れて、この物語のうまれるきっかけを与えて下さった猟師のスサンさんに、この本を見て戴き、よろこんで戴きたいと心から願っております。』
興味のある方は、福音館のHPでも見ることができますよ。
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まじょまじょさん (2004年02月05日 00時21分)
松居さんのことばは心に迫ってきますね。翻訳されたことばもやはり生
きたことばになっていないと、読み手には伝わってこないのでしょう
ね。日本語の大切さも実感です。ご紹介ありがとうございました。
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Re:Re:絵本の文章力(02月04日)
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トミーさん (2004年02月05日 09時27分)
まじょまじょさん
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