『とうすけさん笛を吹いて!』香山彬子 講談社青い鳥文庫
先日の「久米明さんの朗読とパンの笛による物語ーとうすけさん笛を吹いて!』
の原作を読みました
終わりの部分 少し抜き書き
東助は隣に住むおばあさんの家に泊まっている
しんしんと雪の降り積もる夜、家を訪ねてきた男の子
何も言わない
「さあ、さあ、いろりの前においで」
おばあさんの差し出すあま酒をおいしそうに飲む
おばあさんのつくった小さなおむすび
串にさして焼いたやまめやきのこ
いろりでふっくらと煮込んだサトイモやダイコンやこんにゃく
東助も男の子もよく食べた
男の子は東助を見てにっこりした
おばあさんにもにっこり笑いかけた
東助は笛を吹きはじめた
男の子はうっとりとして笛の音をきいていた
しばらくすると男の子すっとたちあがって土間へと歩いていった
くるりとふりかえって
「おばあさん、ありがとう、とうすけさん、ありがとう」
男の子ははじめて口をきいた
「ほんとうに、ほんとうにありがとう」
外ははふぶきがふきあれている
けれども男の子はすこしもこわがるようすもせずに あれくるうふかいふかい雪のなかへとあしをふみいれて歩き出した
男の子が見えなくなる
「いったいあの子は。だれ?」
「この子は、まあ、頭が鈍いこと
あの男の子は私たちのところにいた、あのオスのチョウゲンボウですよ」
「・・・・・・・・・」
「死んだチョウゲンボウが、遠くに旅立つ前に、あいによったのです
あの子はよい子だもの 星空にいくにきまっている」
おばあさんの目に なみだが光っていた
東助も死んだチョウゲンボウのことをおもいだしてかなしくなった
東助はまた笛をふきはじめた
『友とのわかれの曲』のドイナ・・・・・
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