大佛次郎『詩人』『地霊』を読む
『詩人』昭和8年5月『改造』
『地霊』昭和21年3月から9月『朝日評論』
『詩人』というタイトルで一冊となり、昭和21年11月苦楽社刊行
『詩人』セルゲイ大公暗殺を実行したカリャアエフを描く
こどもが大公の馬車に同乗していることで
ダイナマイトの投擲ができなくなるテロリスト
そして二回目は・・・
セルゲイ大公(1857-1905)
アレクサンドル2世の息子、暗殺当時モスクワ県総督(知事)
反動的で知られ、甥で義弟でもあるニコライ2世に影響を与えた
イワン・カリャーエフ(1877-1905)
1905年2月4日血の日曜日事件への報復としてセルゲイ大公を暗殺したエスエル戦闘団員
その罪で同年処刑
『地霊』1902年から1908頃までの社会革命党指導者の一人アゼフが
実は帝政ロシアのオフラアナ(特高)のスパイだったという事件
警察から送り込まれたスパイでありながら
組織の中では重要な役割を果たし、信頼を得て行く
沈着冷静に暗殺の実行にも関わっている
内報者として、組織の摘発に協力しながら
同時に
プレエヴェ内相暗殺、セルゲイ大公暗殺の重要な役を果たしてもいる
その事実が明らかになる経緯
アゼフの逃亡から、事件の影響、死までを描く
ロシヤの特高が使った
革命組織を泳がせ、協力もして、組織を育ててから
一網打尽にするというやり方も出てくる
大佛次郎は
「ロシヤに起こった事情について私が興味を抱いたのは
ロプーシンの『蒼い馬』や『遂に起こらなかったこと』を読んで、
共感が目覚めたからであった」と語っている
ロープシンの『蒼ざめた馬』は、大正9年(1920)に
青野季吉のよって翻訳され、刊行されている
この翻訳書は、古田大次郎(1900-25)や和田久太郎(1893-1928)など、アナーキストに強いインパクトを与えたという
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