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冬至とゆべし |
12月22日 (金) |
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今日は冬至。昔から、ゆず風呂にはいるとか、かぼちゃを食べるとか言われる。実は、我が家では、今夜このどちらも実行した。このようなことは、理屈の云々より、季節感もあって楽しい。
さらに、我が家では、毎年、冬至のころの年中行事がある。
家の庭になったゆずで、「ゆべし」を作ることである。柚餅子と書くお菓子もあるが、こちらは、味噌を入れて作ったものである。
うちのゆずは、花柚子というのであろうか、店に並ぶゆずより小さく、ピンポン玉よりやや大きいくらいの小玉である。ゆずを、七・三に切って中身を取り出し、ゴマや、胡桃を混ぜた味噌をつめて、一時間ほど蒸す。それを形を整え、和紙に包んで冬中寒い外につるしておく。てるてる坊主の逆さになったようなのが並んでつるされているのが、我が家の冬の風景である。
2月ごろになると、ゆずの皮は完全に味噌と一体化して茶黒色のボールになる。薄く切って酒の友にしたりして、濃いゆずの香りを楽しむ。
私がゆべしを知ったのは、娘のころ、お茶会の懐石料理であった。薄く輪ぎりにされた黒いものが、ちょこんと小皿にのせられ、何だろうと思った。口にしたとき、風雅でなんとも奥ゆかしさを感じた。作り方、利用の仕方とともに、それが高価なものだと知ったのも、その時だった。
昔の人は賢く物の保存法を考えたものだと思う。カチカチになったゆべしは、包丁がたたないくらい硬くなり、長く保存できる。使用したいときに少量切りとったり、けずったりして、お吸い物とか、茶碗蒸しに浮かせたり、または和え物などに混ぜて、そこはかとなくゆずの香りをたのしむというわけだ
何年も前から、私は毎年ゆべしをつくっては、喜んでいただけそうな方に差し上げてきた。「あら、貴重なものを」とか、「なかなか芸術的な味がするね」と、ほめるのは訳知りの方。一方で「へエー、初めてだわ、どうして作るの」と素直に喜び、それ以降愛好者になる方も少なくない。
ゆずの皮が、見事に味噌と一体化して、羊羹のようになっていくのが面白く、不思議に思えて他のかんきつ類ではどうだろうと、レモン、みかんなどで試したことがあった。これらは、味噌と合体せず、皮は皮として残るのである。本当にこれを発見した先人の知恵に敬服してしまう。
ところが最近は、ゆべしに対する考え方も変わったように思う。冷蔵も冷凍もできる現代は、ゆずの皮も刻んで冷凍すれば香りを楽しむように利用できる。「硬くなったものを薄く切って、お吸い物に浮かせる・・・」と説明しても、あまり人は感じ入らない。それよりも、包丁で楽に切れるうちに食べたほうがよさそうだ。「おつまみや、温かいごはんにもおいしいよ」というと、「ああ、いいね」と納得したように明るい顔になる。
今年作ったゆべしも、来春、2月ごろの食べごろに、幾人かの人に楽しんでもらおうと思っている。
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