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加藤健一事務所『詩人の恋』下北沢本多劇場 |
09月05日 (火) |
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加藤健一事務所『詩人の恋』
本 文 2003年に上演された音楽劇の再演である
私も二度目だが期待に違わず素晴らしかった
芝居の楽しさを味わうことが出来た
舞台は1986年のウィーン
曲を弾けなくなったアメリカ人のピアニストがウィーンにやってくる
原作は英語である
指導教授の指示で声楽教師のレッスンを受けることになる
この二人だけで話が進んでゆく
オースリア人の教授は酒飲みでピアノを弾くのもうまくない
ピアノを練習しながら飲んでいる酒は何故かオールドパーである
ハイネの詩、シューマンの歌曲『詩人の恋』の歌のレッスンが始まる
ピアニストは何故このレッスンを受けなければならないのか
納得していないので当然歌に気持ちが入らない
教授はなんとか音楽の気持ち、感情を伝えようと・・・
反発しながらも教授の伝えようとする音楽の気持ち、感情に
少しずつ出会い始めるピアニスト
「深い悲しみと深い悲しみがあるからこそ生まれる大きな喜び
それがぴったり合ったときの素晴らしさ」
ピアニストは父との約束を果たすため
ウィーンから5時間のミュンヘンへ行く
そしてダハウ強制収容所を訪ねて大きなショックを受ける
「収容所は町はずれにあるのかと思っていたが、わずか20分で着いた」
「道を聞くと何も言っていないのに、私は何も知らなかったと」
「ウィーンなんて何もかも嘘ばかりだ」
「私はもうドイツ語は使わない ドイツ語で歌わない」
その怒りは、ナチスドイツを歓声を持って迎えたオーストラリア人
のひとりである教授にも向けられる
・・・・・
・・・・・
悪夢にうなされる教授、教授の薬による自殺
ドイツ語で助けを呼ぶピアニスト
教授がシャツの腕をまくるとそこには強制収容所でつけられた
番号が彫られている
あなたもユダヤ人か?
あなたの物語は?
だが教授は・・・・
「人は物語を一つしか持っていない
それを簡単に教えてやれるか」と・・・・
「勇気があったから、意志が強かったから生き残れたわけではないパンをほしがりながら死んでゆく隣に寝ている男が」
目に入らないようにして生きてきてから生き残ったんだ」
「それは美しい季節、輝かしい5月だった・・・」
歌曲「詩人の恋」のレッスンは進んでゆく
ドイツ語で歌われ
英語で訳された歌が歌われ
ピアニストは大きな悲しみを体験しながら
しかしそれがかすかな希望をあきらめていない歌曲の内容を掴み
見事に歌ってゆく
教授もまた同じく悲しみと喜びを歌う
曲の内容、
二人にとっての大きな悲しみと、再生、かすかな希望
芝居全体の大きな悲しみと再生、かすかな希望が三重の構造になっている
観客もまた大きな悲しみと再生、かすかな希望を体験する
暖かなメッセージを持つ舞台であった
歌曲の歌やピアノが大きな悲しみやかすかな希望を
さらに直裁に、繊細に伝えてくれた
加藤健一事務所ホームページ
http://homepage2.nifty.com/katoken/
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