2時間20分というゆったりした時間の中で
せりふにたよらず
せりふによる説明に頼らず映像によって
丁寧に登場人物それぞれのの心理が描かれてゆく
たとえば 夜の上野駅 出発前の夜行列車
現在の夫について東京から室蘭に行くことになった母は、窓際の席で、
姉が見送りにきてくれるのではないかとずっとホームを眺めて気にしている
出発前の乗客の動き、見送りの人々の動き
蒸気機関車の匂いがよみがえってくる・・・
明治大学の校歌斉唱の歌声、応援団風のかけ声が続いている
夫は来るはずないさとポケットウィスキーを飲み始めている
寒いからといって、夫はもうこないさと窓ガラスを下ろす
曇っている窓ガラスを拭き、さらにホームを見ている母・・・・
こんなに引っ張っているのだから最後には姉がかけつけるのかと思っていると
場面は切り替わって家にいる姉が映し出される
こたつにいる父が
行かなくていいのか
自分に気兼ねしなくていい
今からでも間に合う
と姉に語りかけている・・・
作品 東京暮色
製作年 1957年
監督 小津安二郎
脚本 小津安二郎 野田高梧
撮影 春田厚夫
出演者
笠智衆(父)、原節子(姉)、有馬稲子(妹)、
山田五十鈴(家を出た母)、中村伸郎(現在のつれあい)
杉村春子(叔母)、
藤原鎌足(珍珍亭主人)
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