三月三日のひなまつりはすぎて、お雛様を飾ったお宅では、もう片付けられた頃だろう。でも、やっと春めいてきたと感じられる、今日この頃、もう少しゆっくりとひな祭り気分を味わいたいと思うものである。 こんなとき、旧暦をもち出せば、都合がいい。3月31日が、旧の三月三日である。それまで飾ろうと、今、元ラボルームは、人形展の部屋に様変わりして、ときどき幾人かの人を招きいれて、にぎやかである。
その人形たち、雛たちの中で、私の大事にしていたいものがある。
それは、45年ほど前に作ったかまぼこの板の上に乗ったお雛様である。
生まれた吾子の側で、毎晩一体ずつつくっていった。髪の毛は、黒糸、顔、体、着物はすべて絹布、(着物の残り布や、帯のみみ)米粒を入れて鼻をつくる。なんとなく自分の中にあるイメージで、15体を作る。五人囃子の笛は、つま楊枝,鼓はミシンのボビンに紙を張り、糸をかけて作る。それらは、みんな、かまぼこの板の上に載っている。
この人形が、こんなに長く飾られるとは、思わなかった。何度か、もう捨てようと思われたことも。
でも、それがだんだん、年とともに捨てられなくなり、懐かしさや、年年の思いでとともに、大切に飾られ続けるようになった。
人形つくりをやるようになったいまの私の、人形つくりの原点ともいえよう。
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