下北沢本多劇場
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第二次世界大戦末期のポーランドの修道院
ソ連兵将校と下士官7名がドイツ軍捕虜となり地下室に閉じ込められた
その直後、ドイツ軍が突然、撤退したため、
水・食糧がない状態で60日間を地下室で過ごす
ソ連軍に発見されたときには5名死亡、2名生存(1名発狂)
実話に基づくイギリスの作家による芝居である
登場人物はひとりだけ・・・・
主人公ヴァホフ大尉は唯一の正気の生存者として軍法会議にかけられる
舞台には被告席である机が置かれている
暗闇の被告席に光が当てられている
ヴァホフ大尉は観客席にいる判事たちに向かって、被告として立ち、証言する
そこであったことの事実、苦しみと悲しみを切々と伝える
証言によって暗闇の中に地下室の中で起こったことが再現され
舞台は地下室にもなる
被告は2時間半をひとりで語り続ける
地下室の目撃者として、軍事法廷の目撃者として
その場にいるような緊迫感
地下室の目撃者として、
軍事法廷の目撃者として、
そして『審判』という劇の目撃者として
観客は3重の空間に座っているのだが
地下室の捕虜になり、判事になり、被告になり
自分自身について考えざるを得ない
被告は言います
「あなた方は私を嫌っている。それはなぜか、私が正気だからだ。
なぜあれほどのことがあったのに気がふれないのか」
「私は有罪です」「でもそれはなんの罪なのかを決めるのはあなた方の問題です」
「すべてを怖がり、何もわからず、気がふれているとして
あなた方によって病院に閉じこめられている友の側にいてやりたい。
一緒にいた人間としてもしかしたら救ってやれるかもしれない」
「戦争はまだまだ続く、私が有罪であるなら再び戦場に送って欲しい」
とても重い劇です
しかし一番底に人間の尊厳への信頼があり、
主人公が語り続けるエネルギーそのものが
不思議なことに人間存在への希望を感じさせてくれました
これは加藤健一の優しさから出てきたものかも知れません
(加藤健一はこの『審判』がやりたくて
1980年に加藤健一事務所を設立したという
何度かの再演ですでに200回以上この人物を演じてきている)
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