みにくいあひるのこ(アンデルセン) |
07月01日 (木) |
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北欧の旅は、天気に恵まれ、出来上がった写真も、一段と美しい。心に残るのは、新緑の緑といえるやわらかい木のみどり、バジタブルーの空、フィヨルドの神秘的な青や深緑り、どこも満足の旅であったが、もし、心残りがあるとすれば、アンデルセンの故郷、オディンセへ行かなかったことだ。
世界的な童話作家であるアンデルセンが、なんといってもデンマーク人だということで、コペンハーゲンでは、アンデルセンの名前をよく聞くことになる。
「人魚姫」に因んだ人魚の像は、観光の場所にはなっているが、なんとも物語からは、離れた感じがする。私は、その後ろの風景のほうに、興味を持ってしまった。スマートに、きれいに並んだ風車の列が、バルト海の風を受けてまわっていた。
歩行者道ストロイエを歩いて、市庁舎広場まで来ると、市庁舎の横に、アンデルセンの像がある。その姿は21年前に来て、この脇に立って写真を撮ったときと、変わってはいない筈なのだが、周りの様子が変わったのだろう。騒々しく忙しくなった。像も表情が硬くなったような気さえする。
古い建物が並ぶニュウハウンをクルーズしていくと、アンデルセンがコペンハーゲンにいたときに住んでいたといわれる家を紹介する。
コペンハーゲンは古いお城も多い。そして、どこへ行っても水辺に建物の姿を映すような風景が多い。すると、ごく自然な状態で静かに白鳥が浮かんでいる。郊外の宮殿へ行ったとき、水辺の木の下に、白鳥の親子がいた。近くにいた若い日本人観光客が「あ、ほんとに白鳥の子は、みにくい子なんだ。」と叫んだ。
―――小さいころからよく聞いた物語です。いつも、みにくいあひるの子ってかわいそうだな、と思っていました。やっぱり、人間も同じように、少し、他人と違うところがあると、意地悪なことを言いたがるのですね。親から直接言われるより、話しているところを、聞いてしまったほうが、どんなに悲しかったかと思います。生きる力がなくなってしまうと思います。
それでもみにくいあひるのこは、立派です。ちゃんとひとりで、自立していくことが出来たのだから。最後には、美しい立派な白鳥になり、本当によかった。と、この物語から、いやなことがあるとき、「そのうち、きっと、それはもっといいことがあるための今なのだ。」と思うようになりました。―――S子(高2)
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Re:みにくいあひるのこ(アンデルセン)(07月01日)
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がのさん (2004年07月01日 09時37分)
ご夫婦での北欧の旅、垂涎のきわみです。デンマークといえばアンデルセンの
「人魚姫像」が思い出されるほどよく知られる風景ですが、は~、いまはそん
な感じなのですか。つい先日のこと、仕事のなかで小川未明の『赤いろうそく
と人魚』のことを書きながら、あの物語の舞台とされる新潟・柏崎の番神岬を
想い、岩の上に横坐りするアンデルセンのあの「人魚姫像」を想いました。神
秘な幻想とゆたかなロマンに満ちた名作である点、人間の善意を信じた人魚が
人間の物欲に裏切られるという点でふたつの物語は共通しているようですが、
ヒューマニズムと社会悪へのはげしい抗議を含むという点でも、ひとつに重ね
ながら考え、愉しみました。そこに観光用の像を置くのも人間の浅はかな智恵
と欲望なら、それを薄汚れた印象にしてしまうまわりの風光を生み出すのも、
人間の弱さなのでしょうか。そういう人間の欲望を越えて、物語って豊かで美
しいですねぇ。物語が旅を一段と印象深いものにしてくれるそんな時間をたっ
ぷり持つことができるのも、テューター活動をなさってこられた賜物なのでし
ょうね。うらやましいです。
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