 Re:谷間の百合
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がのさん （2007年07月17日 11時40分）
Ｐｌａｙ ｗｉｔｈ ｍｅさん
【その３】
『谷間の百合』は壮大な恋愛小説として読まれるのが普通ですが、肉
と霊の葛藤のなかで展開する崇高な愛の行方もさることながら、自然を
うつすバルザックの筆力の冴えと、人間を観察するその目の鋭く澄んで
いることが印象に深く刻まれる作品でしたね。
いまのわたしは、８月中旬まで、地域のさまざまなことに追われて本
を読む時間がほとんどなく、それが大きな悩みです。ピンチです。そん
ななか、Play with me さんとこうした感動を共有できることを、ほんと
うにありがたいと思っています。感謝いたします。
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Re:谷間の百合
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がのさん （2007年07月17日 11時38分）
Ｐｌａｙ ｗｉｔｈ ｍｅさん
【その２】
そう、折あるごとに考えているギリシア神話のほうから言うと、タンタ
ロスのような状態にあるとき、フェリックスは深い孤独と疲弊感と劣等
意識のなかで崇高なこころに出会ったんですね。
タンタロスというのは、ゼウスの子で、黄泉の国の湖にあって、顎の
ところまで水に浸されながら、焼け付くようなノドの渇きを癒すことが
できないでいる哀れな存在。ヘラクレスが12の難行と戦っているとき、
スティクス川を渡ったハデスの国(黄泉の国)で目にした凄まじい光景
で、水を飲もうとするとサ―ッと水は退き、木の実を摘もうとするとピ
イーンと枝が退き、永遠の飢渇に苦しみつつなお生きていかなければな
らない男。ツキに見放されたおれって、まるでタンタロスだ、とまいっ
てしまっていたときに出会った気高い女神。アンリエッタは、フェリッ
クス(あるいは、わたし)には、そんなふうに見えたものです。つまり、
人生の暗い谷間の底のようなところから見えた､あまりにも神々しい太
陽。
『ゴリオ爺さん』を読んだときに調べたことによりますと、ふたりの子
持ちと書かれているモルソフ夫人のモデルと思われるベルニー夫人は、
当時(バルザック23歳)、45歳、９児の母親でした。バルザックはパリの
屋根裏部屋にこもって作家修行をしているときで、まだ誰にも評価され
ていませんでした。で、ベルニー夫人とその近親者たちに資金を出して
もらって、バルザックは自分で出版業をはじめます。もちろん、商売は
うまくいきません。その間にも、高級娼婦オランプ・ペリシエやカスト
リ公爵夫人との関係が生じ、そのつど破局します。ポーランドのハンス
カ夫人や、バルザックの子をなすことになるマリア・デュ・フレネーと
の関係、私生児をなすギドボニ・ヴィスコンチ伯爵夫人…と、まことに
おさかんです。それでも、36歳、再びベルニー夫人との交際がはじま
り、その息子の死を機にふたりの関係は終局を迎えます。
【つづく】
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Re:谷間の百合
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がのさん （2007年07月17日 11時35分）
Ｐｌａｙ ｗｉｔｈ ｍｅさん
【その１】
＞「谷間の百合」やっと読み終えました。「ゴリオ爺さん」のパリの社
交界とは正反対の息苦しいほどの清い愛。モルソフ夫人の心の葛藤。そ
して愛に死ぬ衝撃。パリの社交界での成功のレールを引く夫人。そこに
世俗的な愛が忍び寄ることを恐れながらも愛するフェリックスをパリに
送り出す気持ちを思うとそれほどまでに深い愛だったのだと最後に気付
きます。読みにくいと思いながらも惹かれるバルザックの作品です。
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すごい！ すばらしい！ さすがPlay with me さんです。バルザック
の名を知らない人はなくても、いまどきこの大河小説をひもとこうなん
て人は、めったにいません。読書をよくするとされるラボのみなさんの
なかでも、最近『谷間の百合』や『ゴリオ爺さん』『従妹ベット』とい
ったあたりを読んだという人は、たぶんいないはず。薄っぺらなものの
うえで滑っているだけでなく、こういうものをじっくり読んでいただき
たいですがね。だって、こういうものを読んだあとには、自分が新しく
なったような、自分がひとつ確かに高められたような、そんな悦びがあ
りますよね。新書などで表面的なその場限りの簡易知識をいくら詰め込
んでもぜったいに得ることのできない、感動の深さがここにはありま
す。うわっ面の知識を追うことのむなしさを知るときでもあります。
『谷間の百合』――。もうずいぶん前に読んだもので、忘れてしまっ
たことばかりですが、そうそう、バルザック自身を想わせる主人公のフ
ェリックス。百合の花に譬えられる美しい貴婦人モルソフ夫人(アンリエ
ット)。ふたりはある舞踏会で偶然に出会い、青年は踊ったあと思わず夫
人の匂やかな肩に顔をうずめてキスをしてしまいます。愛情薄い家庭で
育ち、星を眺めることで自分を慰めることしか知らない青年にとって、
伯爵夫人は生涯、忘れることのできない人となっていくんですね。
昔、これを読んだときにわたしの胸板を突き破った衝撃の大きさは、
わたし自身のあり方にあったでしょうか。どんな努力にもかかわらず、
ことがうまくいかないとき、周囲のだれにも目を向けてもらえないよう
なとき、才能や実力の真価をどこにも発揮できないようなとき、胸のな
かにある思想がだれにも評価されないようなとき…。【つづく】
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谷間の百合
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Ｐｌａｙ ｗｉｔｈ ｍｅさん （2007年07月17日 00時18分）
おひさしぶりです。
「谷間の百合」やっと読み終えました。
長いことかかったんです。
「ゴリオ爺さん」のパリの社交界とは正反対の息苦しいほどの清い愛。
モルソフ夫人の心の葛藤。そして愛に死ぬ衝撃。
パリの社交界での成功のレールを引く夫人。そこに世俗的な愛が忍び寄
ることを恐れながらも愛するフェリックスをパリに送り出す気持ちを思
うとそれほどまでに深い愛だったのだと最後に気付きます。
読みにくいと思いながらも惹かれるバルザックの作品です。
バルザックの世界はなんと蔵から出てきたお道具の時代と同じなんで
す！日本の片田舎の生活と全く違いますが、ちょっと関心が深まりま
す。
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Re:★ギリシア神話は女性をどう描いたか（07月03日） [ 関連の日記 ]
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けいこさんさん （2007年07月13日 22時35分）
「タイタンの戦い」私、映画館で見ました！
色々こだわりを持っている私（かなり偏っていることに最近気づいてい
ますよ。ちゃんと。）。映画の基準は、SFX、痛快勧善懲悪、美男美女。
当時としては、あの特撮は画期的なものでしたよね！
ヌメヌメしたメドゥーサを印象的に覚えています。
名作でしたよ。確かに。
ああ！あの映画のことをおっしゃていたのですねえ。
おっと、明日は、発表会。早く寝なくちゃ。
鍋島先生や、成田先生の前で、小学生のお披露目です。
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Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:★ギリシア神話は女性をどう描いたか（07月03日） [ 関連の日記 ]
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がのさん （2007年07月13日 00時57分）
Ｋさん
【その２】
こりやあ、もう、イソップの「おしゃれガラス」という奇態ないきもの
になってしまいます。赤い羽根を一本、黄色い羽を一本、青も緑も橙も
黒も…というケッタイなカラス。ま、人によりいろいろお考えでしょう
が、わたしは当時、そう考えました。
＞男の子がその内、母親より美しい人を見つけてしまうこと、私は覚悟
が出来ています（つもりです）が。
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かわいそうに、Kさんの息子さん、たいへんな星のもとに生まれてしま
いました、苦労すると思いますよ、月下美人にまさる美しい女性を探し
出して結婚しようと思えば、この世にそう簡単には見つかるとは思いに
くいですから。アンドロメダを求めて命がけの冒険にでるペルセウスの
艱難辛苦を思えば、ほどほどでいいんだ女なんて、といまのうちからよ
く教えこんでおいたほうがいいかもしれませんね。ハッハ。
※…「タイタンの戦い」Clash of the TitanをYahoo! で検索してみまし
た。DVD紹介で、あるある、あるある…。参考までに。1981年にアメリカ
で製作された映画。監督=デズモンド・デイヴィス、脚本=ビバリー・ク
ロス、出演は、ペルセウス=ハリーハムリン、ゼウス=ローレンス・オリ
ヴィエ、あのかわいいアンドロメダちゃんはジュディー・バウカーとい
う子、テティス=マギー・スミス、美の神アフロディテにはウルスラ・ア
ンドレス、といったところ。特撮は名手のレイ・ハリーハウゼン。これ
が最後の作品となったとか。ほとんどはなじみのない出演者でしたが、
特撮の迫力は感動ものでしたね。
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Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:★ギリシア神話は女性をどう描いたか（07月03日） [ 関連の日記 ]
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がのさん （2007年07月13日 00時50分）
Ｋさん
【その１】
＞「ペルセウス」ライブラリー、肝心要のアンドロメダの話が抜けてい
るのをとても残念に思っていました。なぜでしょうか？
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理由はいろいろ挙げることができますが、たしかに美しいアンドロメ
ダが荒海を前にした懸崖に、鎖につながれ身もだえしているシーン(美女
が半裸で!? テーマ活動ではやっぱりちょっとムリがある、美女でない
とな～)、見てみたいような…。〔そんなこというからＫさんにバカにさ
れるんじゃないか、バカ(ゼウスの声)〕
これをつくっていたのは、まだ「ラボ・テープ」と呼んでいた時代
で、いまのラボCDライブラリーになる以前のつくりかたによりました。
ひとつには、物理的(１話15分以内という時間の)制約のなかでリライト
せざるを得なかったことがあります。
それに、わたしたちがテクストにするポピュラーなギリシア神話のペ
ルセウスものがたりは、映画「タイタンの戦い」とはだいぶ違ってい
て、ペルセウスの生誕の秘密と、女神アテナの神威を借りた彼のめくる
めく冒険でして、三人のグライアイというふしぎな存在と、メドゥサ退
治、そして母ダナエを奪おうとの姦計に狂奔するポリデクテス王にひと
あわふかせるところが軸になっていたと思います。どうしてなのか、多
くのポピュラー版では、アンドロメダは、ペルセウスが偉大な冒険を終
えて帰る途中に出会うできごとで、まるで「つけたり」のようになって
います。
それでなくとも、このものがたりでは、マンガチックなもののオン・
パレードです。ひとつの目玉を三人で順番につかうグライアイじゃない
ですが、目ン玉をしっかりでっかくしていないと眩暈をおこしそうなふ
しぎがいっぱいです。姿をかくすカブトが登場したり、翼のついたサン
ダルだの、メドゥサのアタマをヘビの髪の毛ごとつっこむ袋だの、鏡の
ような楯だの、鍛冶の神ヘパイストスのつくった切れ味バツグンの剣だ
の、ゼウスの金の雨もあるし、……要するに短篇ものがたりとしては
too much なんですね。へたをすれば、神話ではなくてコミックに。それ
ならそれでもいいんでしょうが、そこへさらにアンドロメダとの恋もの
がたりをはめこむとなると、こりやあ、もう、イソップの「おしゃれガ
ラス」という奇態ないきものになってしまいます。
【つづく】
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Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:★ギリシア神話は女性をどう描いたか（07月03日） [ 関連の日記 ]
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けいこさんさん （2007年07月11日 23時30分）
がのさん
長い長い書き込み・・・、痛み入ります。
月下美人というのは、ちょっと・・・。
お会いする機会がないのが幸いです。
虫嫌いの子をパーティに入れないなんていう意地悪はしていませんが、
私のパーティに入ったからには、必ず好きになってもらっています。
子どもを虫嫌いにしたいお母さんはいないので、重宝がられてますよ。
得に虫の苦手なお母さんたちに。
「ペルセウス」ライブラリー、肝心要のアンドロメダの話が抜けている
のをとても残念に思っていました。
なぜでしょうか？母子に力点を置きたかったのかな？
男の子がその内、母親より美しい人を見つけてしまうこと、私は覚悟が
出来ています（つもりです）が。
今日はプレイルームから小学生まで、3パーティ。
子ども達を寝かしつけて、ほっとしながら、PCを触っています。
今から、ムシムシたちとの時間。
ちなみに、現在、生きている爬虫類はいません。恐竜のフィギュアには
囲まれていますけれども。（本当は、今は、恐竜が専門です。）
では、おやすみなさいませ。
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Re:Re:Re:Re:Re:Re:★ギリシア神話は女性をどう描いたか（07月03日） [ 関連の日記 ]
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がのさん （2007年07月10日 21時10分）
Ｋさん
【その３】
わかりましたよ、美しい女性にはあの醜いヘビを招き寄せる何かふし
ぎなものを古来もっているようだということ。あのメドゥサだってたい
そうな美人だったとなっていたと思います。
やだやだ。Kさんにへんなムシがつかず大過なくここにいたったのも、
そのヘビの影がガードしてくれていた賜物なのかなあ。やはりわたし
は、どんな種類のヘビも“No Thank You!” です。うっかりＫさんには
近づけませんね。ご用心、ご用心！
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Re:Re:Re:Re:Re:Re:★ギリシア神話は女性をどう描いたか（07月03日） [ 関連の日記 ]
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がのさん （2007年07月10日 21時09分）
Ｋさん
【その２】
どうやら、美しい女性とヘビや爬虫類は深い縁でつながっているらし
い。ギリシア神話の話題から大きく逸れてしまったとお思いでしょう
が、まんざらそうでもないんですよ。「ペルセウス」のおはなしを想い
出してください。ひとつは、メドゥサの髪はヘビでできていて、いつも
ざわざわと騒がしく動いていました。このヘビたちが「かわいい」「愛
すべき」「美しい」存在で「かわいい」「かわいい」といっていたら、
ペルセウスの冒険のはなしは成り立ちませんよね。Kさんのパーティのテ
ーマ活動は、この場面をどうつくるんでしょうか。Ｋさんの嗜好の線で
やっていくんですか。子どもたちに抵抗はありませんか。ムシ好きでな
い子はラボに入れてやらない、なんてイジワルしていませんか。
ずっとずっと以前のこと、「タイタンの戦い」というすぐれた映画が
ありました。壮大な恋と冒険のものがたり。だれの出演だったかなど、
細かな記憶はありませんが、怒涛逆巻く海原を前にしたおそろしい懸崖
にアンドロメダが鎖につながれています。半裸の状態です。このアンド
ロメダが、人間のいかなる天才の能力をもってしても表現できないほど
魅力的で美しい！ 神品とはこのことか！ なんでその美女がこんなひ
どいめにあわねばならないのか、といえば、その母カシオペアが神をも
畏れず、「わたしの娘はテティスよりはるかに美しい」と自慢してしま
ったことによります。海の女神テティスはそれを聞いて頭に湯気をたて
てカッカと怒ります。怒って、その娘のアンドロメダを海獣クラケンの
いけにえに捧げよ、さもなくば町ぜんたいを大津波で滅ぼすぞ、と宣言
し脅します。
その海獣クラケンの正体がヘビ、身の毛もよだつ巨大な蛇体でした
ね。ゼウスの黄金の雨を受けてダナエが生んだ子のペルセウス。この英
雄を冒険に駆り立てたのが、もともとは美女アンドロメダを救出し、自
分の妻にすることだった、というのがこの映画のストーリィ。
【つづく】
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